子どもの進路はどう決めればいいのか

先ほど述べた通り、勉強を強制することは良くありませんよね。進路決めでも同じように、東大生の親御さんは子供に質問をすることが多かったそうです。

たとえば、「こういう進路に行きたい」と子供が話したとして、「こっちの方がいいんじゃない?」「こうした方がいいよ!」とは言わないのです。ただ、「なんでその進路に進もうと思ったの?」ということだけを、とにかく繰り返し質問して、より具体的な話に持っていくのです。

この場合のよくある失敗例として、子供が親に進路を相談するとき、子供は親からどんなフィードバックを受けたとしても、否定されたような感覚になってしまうことがあります。

子供が「○○大学を志望したいんだけど」と相談したとして、親としてはその子の将来を心配して、「本当にそこでいいの?」「合格できるかどうかはどれくらいの確率なの?」「その大学に行って、将来はどういう道に進もうと思っているの?」と聞きたくなるかもしれません。気持ちはよくわかります。

しかしそのときに、子供はその質問の全てが、「否定」に聞こえてしまうのです。親としてはただ確認しているつもりでも、子供からすると「その進路じゃダメだ」と言われているように感じられてしまうことが往々にしてあります。

そうならないようにするための聞き方があります。とにかく「どうして本人がそう思ったのか」を深掘りしていくのです。

子どもの意見を尊重する

もし、子供の考えが甘かったとしても、それを指摘する必要はありません。聞かれる側からすると、「どうしてそこに行きたいのか」という質問に対する答えを考えているうちに、「あれ? そういえばなんでだろう?」と、内省することができます。

西岡壱誠『教えない技術 「質問」で成績が上がる東大式コーチングメソッド』(星海社新書)

子供が自分で気づけるように、ただ質問することだけを繰り返し、否定にならないようにする。これが非常に重要な観点なのだと思います。

さて、これらの話でわかることは、東大生の親御さんは、子供のことを尊重する育て方をしているということです。

子供のことを、大人と同様に扱って、子供扱いをあまりしない。相手に質問して、相手の意見を聞き、相手と同じ立場に立って考えるスタンスを取ることで、子供に自立を促す。まさに、「教えないけれど子供が勝手に育つ」ということが体現されていると思います。

ちなみに、「○○させる」という言葉が良くないのは、教育学的にも証明されている話です。これは笑い話ですが、「教育」という言葉は教育効果が非常に低いことがわかっています。授業で先生が「今から君たちに教育します」という言葉を言うと、生徒のやる気が著しく下がるのだそうです。

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