教えなくても勝手に学ぶようになる仕組み
また、勉強は教えないけれど、「考えさせる」ように心がけているという話もよく聞きます。「この花の名前って『ヘビイチゴ』って言うんだよ」などと、知識を教えようとはしません。
その代わりに、「この花の名前って『ヘビイチゴ』って言うんだけど、蛇と苺なんて不思議だよね。何でヘビイチゴって言うんだと思う?」と、答えを話すのではなく、名前の由来や理由を質問し、自分で考えてもらうようにするのです。
一方的に何かを教えられるのと、質問をされてそれを自分で考えるのには、大きな差があります。子供は、質問に対して「どうしてだろう?」と自分で考えるようになるからです。
単純に「ヘビが出るような湿気の多い場所に育つからヘビイチゴと言うんだ!」と理由もセットになっていれば覚えやすいですし、さらにこのプロセスが子供にとって習慣化すれば、普段からものを考える習慣がつきます。
そして親御さんが質問していないときにも、子供は花を見て、「ああ、そう言えばヘビイチゴと同じように、この花の名前にも意味があるのかもしれない」と普段から頭を使って考えるようになるかもしれません。これこそ、教えなくても勝手に学ぶようになるということだと思います。
「○○させる」はNG
この本ではずっと、「教えない」ことをテーマにしていろんな手法を紹介させていただいておりますが、いまのような「質問する」ことは「教える」こととは違います。
指導しているときに、「こうした方がいいよ」と答えを与えるのではなく、この親御さんたちのように「なんでこうしたの?」「これでうまくいくのかな?」と、ただ質問するスタンスを持っておくことは、自主性を育む上でプラスになるのでどんどんやってほしいのです。
また、こんな話もあります。東大生の親御さんは、子供に「○○させる」という言い方をあまりしないのです。「勉強させる」とか「片付けさせる」と極力言わないように心がけている家庭が多いんです。
なぜかというと、「○○させる」というのは、上の人が下の人に何かを命令してやらせるニュアンスを含んでいるからです。この言葉は、子供の自立を阻害することになってしまいます。誰かの命令を聞いてやっているうちは、自分で考えて行動することになりませんよね。
だから、極力「親が言ったから子供がそういう行動をする」状態を作らないようにしているのです。「え、でもそれだったら、子供のことを叱れないんじゃないの?」と思うかもしれません。