選挙での影響力は少なくとも政治参加の意志を示すことが重要
【投票行かないマン】でも、少子化が進む現在では、そもそも若者は少数派です。若者がいくら選挙に行っても影響は微々たるもので、結局、歳を取った人たちが勝つんですよ。
【政治哲学者】でも、こう考えたらどうでしょう。たとえ選挙への影響力は少なくとも、政治参加はするという決意をもったら。
【投票行かないマン】影響力が少なくても政治参加はする……? それにどんな意味があるんでしょう? あんまりコスパがよいとは思えませんが……。
【政治哲学者】政治に参加しようと思うと、積極的に情報を集めて、活動的になります。そうやって複数の人々が公共の場に参加して、意見を交換することによって、それがだんだんと大きくなっていくのではないでしょうか。そうすれば、若者の声が年配の人たちにも届くかもしれません。ハンナ・アーレントもそういっています。
アーレントは著書『人間の条件』のなかで、古代ギリシアを例にとり、人間の基本的活動を「労働(labor)」「仕事(work)」「活動(action)」に区分した。「労働(labor)」とは、生活の糧を得るための生命維持活動である。「仕事(work)」とは、道具製作などの文化的活動のことである。さらに、「活動(action)」とは、人間が「労働」・「仕事」以外の時間を利用して政治について語リ合う自由な言語活動をいう。この市民による自由な「活動」こそ、公共的な政治空間としての役割(公共性)をになうものであるとアーレントは主張した。
【投票行かないマン】なるほど……。政治参加をしようという考えをもつことで、人と情報を交換するようになるかもしれませんね。
【政治哲学者】この世界には、さまざまな人々がいます。アーレントは、それを複数性と呼びました。ユニークな人々がそれぞれ政治に参加して、みんなで公共性を保つことで、政治のかたよりを緩和することができるのです。
人間は一人ひとりがユニークであって、ひとつにくくることはできない。これをアーレントは「複数性」と呼んだ。全体主義ではユニークな人やマイノリティを迫害する傾向にある。アーレントは、全体主義が出現しないようにするには、多様性をもつ人々が政治参加をする必要があるとした。
【投票行かないマン】投票自体に大きな意味はなくても、政治参加するのは重要なのですね……。ちょっと考えてみたいと思います。