所属感を求める大衆の欲望がプロパガンダを助長する
【政治哲学者】新聞なんかに書いてあると思いますが……読んでますか?
【投票行かないマン】新聞ですか、読んでないですね……。スマホなんかでニュースを見ようにも、途中から有料版になったりするし。強いていえばSNSでたまに見るくらいですが、それもおもしろくないです。
【政治哲学者】でも、そうやって一部の情報ばかり見ていると、受け取る情報がかたよってしまうかもしれません。ナチス政権のプロパガンダまでとはいかないでしょうが、もし、それに近い情報の操作がなされていたりしても気づかないかもしれませんよ。
全体主義への途上では、個人は帰属意識を失って流されやすい大衆の一人となり、所属感を与えてくれるフィクション的な希望を求める傾向にある。こうした傾向が、ナチスのプロパガンダを助長した。
ナチスは、「白色民族と有色民族」「高貴な血統と下等な血統」などの誤った区別を大衆に植えつけ、人々に所属感を与えようとした。こうしてヒトラーは「ドイツ人とはアーリア人のことで、ユダヤ人はドイツ人ではない」という図式を宣伝し、大衆もこれに同調してしまった。
【投票行かないマン】今は、スマホで見たいものだけを見がちなので、確かに情報はかたよるかもしれません。自分で情報を拾いに行くのが大事なのはわかりますが、仕事に追われて、時間がありません。
【政治哲学者】確かに仕事が忙しいときもあるかもしれません。しかし政治思想や歴史の勉強ができずに、政治の状況がわからなくなっているようでは、いつの間にか社会が労働者にとってさらに厳しくなるような状態に変わったとしても、気がつかないのではないでしょうか。
政治について語り合うことが避けられがちな現状
【政治哲学者】学校でも、世界史や公共などの科目で、政治について勉強すると思うんですが……。それでも、興味は湧きませんか?
【投票行かないマン】いや、学校の勉強は試験対策中心なので、政治に興味をもつことはまれだと思いますよ。詰め込み式教育ですから。
【政治哲学者】そうですかね。学校で、政治についていろいろな意見を共有し合うという授業はなかったのですか?
【投票行かないマン】ほとんどないですね。先生から生徒への一方通行の授業だったような気がします。最近は、社会科で思考する機会を増やすという方針が進められているようですけど、それもあまり効果はないのではないでしょうか。そもそも政治について語り合ったりすると、ちょっと引かれてしまいますしね。
【政治哲学者】なるほど……。あなたたちは学生のころから、自分の意見をあまりもっていないようですね。でも物事を人任せにしてしまうと、政治の独裁化が起こらないとも限りません。若者が選挙に行って、政治を変えていかなければ。