牧野は「ズボラに見えるのは違うことに凝り性だから」と自己分析

牧野の昭和10年ころまでの業績は、『牧野植物学全集』に集大成されている。その全集を編集した園芸家の石井勇義は編集後記で、「牧野先生の厳密なる態度と、容易に纏めようとなさらない御性分とが、この全集にも反映して刊行が遅延し、……世の中に『頼まれた事は少しもやらずに、頼まれない事ばかり夢中になってやる人』という方があるとしたら、その第一人者は牧野先生であろうと思う」と書いている。

牧野はその辺のことを十分に自覚しており、「(石井)君がよく私の癖を吞み込んで、うまく其間を操縦調節したから」この全集をまとめることができたと感謝している。さらに牧野は自分のズボラな性格について、次のように弁明している。

私のズボラは質の悪いズボラではない、一方でズボラと見える時は必ず一方で精励して持ち前の凝り性を発揮して居る時である。丁度、天秤の様なもので、一方の下がった時は必ず一方が上がって居る。其の真相を洞見する明がなく、無闇に私をズボラな人間とけなしつけるのは、其の一斑を見て全貌を知らざる皮相の観察である。(『植物集説』下巻)
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