安全性への疑念から、レンタル事業の是非をめぐる4月の住民投票に発展。否定派が勝利し、パリの街からすべてのレンタル電動キックボードが8月31日を最後に姿を消した。個人での所有は引き続き許可される。

専門家たちは、電動キックボードが急に普及し、議論が追いつかなかったことに問題があったとみる。ニューヨーク市交通局の元トップ・エンジニアであるサム・シュワルツ氏は、米インサイダー誌(現ビジネス・インサイダー)に4月、こう語っている。

「あまりにも急速に普及したため、どうすればいいのかわからないのです。通常であれば10年から15年はかかる移動手段の変化を、わたしたちは2年から3年のあいだに目の当たりにしました」

自動車は減らず、バスより環境に悪い研究結果も

課題はまだある。自動車利用からの転換を念頭に、環境に優しいと期待された電動キックボードだが、実は想定ほどエコではない。

電動キックボードの過剰な導入が問題となっている地中海のマルタでは、アーロン・ファルギア交通相がロイターに対し、電動キックボードの導入で自動車の利用が減るとの期待は誤りだと指摘した。

「国際的な研究および事例によれば、それまで徒歩や公共交通機関を利用していた人が電動キックボードに乗り換えているのであって、自動車からではありません」

製品のライフサイクル全体をみれば、むしろバス移動よりも環境負荷が高いとの分析がある。CNNが報じたノースカロライナ州立大学の研究によると、寿命の短さがカーボンフットプリントを押し上げているという。

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研究を進めたジェレマイア・ジョンソン准教授は、アルミ製の電動キックボードはレンタル用途の酷使に絶えられず、平均わずか数カ月で廃車になっているとの実態を語った。耐久性を高めた新型製品も出ているが、それでもレンタル用途での耐用性は長くて2年が限度だという。

歩行者との共存が難しく、環境面でのメリットも想定を下回る電動キックボードは、厳しい立場に追いやられている。

アメリカで、シンガポールで…危険性の認識が広まる

こうしたことから世界の都市で、規制の動きが出ている。地中海の島国・マルタは、レンタル電動キックボードの規制に動いた。来年3月1日から、電動キックボードのレンタルを全面的に禁止する。ロイター通信によると、歩行者や自動車利用者から多数の苦情が寄せられたためだという。