アメリカでは、サンフランシスコやサンディエゴなどの大都市が、安全面や駐車場に関する懸念から、厳しい規制の導入や禁止の検討を行っている。危険性はスウェーデンでも問題となった。今年だけで死亡事故1件を含む241件の事故が発生しており、インフラ相は状況を「カオスだ」と表現している。シンガポールでは、電動キックボードと衝突したサイクリストの死亡事故が発生。これを受けて来年、試験的な禁止措置が敷かれる可能性がある。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙は、パリが電動キックボードを禁止したのに対し、同じフランスのマルセイユは禁止を検討したのち、最終的に規制を見送ったと報じている。マルセイユ市の副市長は、電動キックボードが公共交通の流れを改善し、自動車への依存を減らすと強調した。
電動キックボードに固執する必要はあるのか
潜在的なリスクを抱える電動キックボードは、世界の都市で活発な議論を巻き起こしている。迷惑で危険な乗り物という見方がある一方で、特に人口密集地では自動車に代わる環境に優しい乗り物という意見も根強い。
だが、危険性のあるキックボード型に固執する必然性は低いだろう。EV関連ニュースを報じるエレクトレックによると、パリで電動キックボードのシェアが禁止されたことを受け、現地ではレンタル電動自転車の利用者数が急増した。2022年9月に約75万回だったところ、2023年9月には約2.6倍にあたる200万回近くに跳ね上がったという。新たなモビリティとして注目される電動キックボードだが、より安定性の高い自転車で代用可能だったことを示している。
行動範囲を広げアクティブな毎日を支えてくれる電動キックボードは便利な半面、利用者側にも歩行者側にも予測できない危険がひそむ。日本で導入の先駆けとなっている渋谷では、坂道の車道を、スピードを出して駆け抜ける危険な利用も見られる。
パリやマルタ、アメリカの都市や大学などで禁止令や規制を求める声が高まるなか、日本でも安全性をめぐる議論が求められる。