観光地として一般客の来場も見込んでいる

「美術館を一般の方にも開放をするということは、この芝生広場やその下にあるカフェテラスやフードコートも利用できるということですか? もしそうならば、観光地として多くの人が訪れそうですね」

私がそのように尋ねると、キムさんも笑顔で頷きながら回答をしてくれた。

「一般の方にどこまで開放をするか、開放する場合、美術館などの入場料などをどうするのかなども、まだ何も決まっていません。これから内部で会議などをして決めていくつもりです。でも、アートは人類共通の宝ですから、なるべく多くの人の目に触れるようにしたいとは考えています」

聖地取材で見えてきた“日韓の温度差”

日本人の感覚では、「霊感商法」の問題が指摘されて、社会から糾弾されている「反日カルト」が運営する美術館など、誰が行くものかと思うかもしれない。

しかし、先ほども説明したように、韓国では清心平和ワールドセンターで開催されるコンサートにK-POPアイドルが普通に参加している。「旧統一教会」というものが、それほど社会悪として攻撃をされていなければ、「アレルギー」もないのだ。

窪田順生『潜入 旧統一教会 「解散命令請求」取材NG最深部の全貌』(徳間書店)

ということは、この天苑宮に併設される美術館も、日本の箱根や伊豆などにある宗教団体が運営する美術館と同じような形で、韓国の一般人がレジャーとして訪れる観光スポットとして、韓国社会に普通に受け入れられる可能性は十分あるのだ。

日本ではさまざまな自治体で議会が「関係断絶宣言」をして、ボランティアや市民活動から旧統一教会信者を続々と「排除」しており、教会に対しては宗教法人格を剥奪せよと言っている。

一方、その宗教団体の世界本部では、世界の一流アーティストの作品を多く収蔵した美術館のオープン準備をして、一般の人々にも広く公開したいと考えていると公言をする。韓国社会全体で、それを糾弾するような動きもない。

この「温度差」は一体なんなのだろう。釈然としない思いを残したまま、私は天苑宮を後にした。

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