JR東日本の全路線でもっとも利用者が少ない線区
2位:陸羽東線 鳴子温泉駅―最上駅間(宮城県、山形県)
100円を稼ぐのに1万5184円を要するこの区間は、月の利用者44人と、JR東日本の全路線でもっとも利用者が少ない。久留里線と同じく、運賃収入の極端な少なさが、低いコスパの根本的な原因だ。
さらに、2019年の実績(営業係数8760、乗客79人)と比べると、すべての数値が極端に悪化している。コロナ禍の影響だけでなく、観光列車「リゾートみのり」が2020年に運行を終了したことが一因だ。
「リゾートみのり」は仙台駅、東北新幹線古川駅などから、陸羽東線の沿線に観光客を送り込む役割を果たし、2009年の運行開始から延べ21万人に利用された。
しかし、もともと中古車両(キハ48形。同系統の車両は1970年代・80年代に多く製造されている)を改造・運用していたため老朽化が激しく、2020年8月に運行終了を余儀なくされた。
その後、2019年には年間500万円あった運賃収入も、2022年には半分以下の200万円まで激減。かかる経費がほぼ横ばいだったが、陸羽東線の営業係数は悪化してしまったのだ。
ただ、「リゾートみのり」の収入を含めた2019年の数字で見ても、経営状況はかなりよろしくない。陸羽東線に限らず、県境をまたぐ区間は通勤・通学・通院などの移動を獲得することが難しく、観光列車の収入増加でカバーするには、あまりにも経営状況が苦しすぎる。
すべて維持できるのか…新潟県の課題
3位:磐越西線・野沢駅―津川駅(福島県、新潟県)
4位:飯山線・戸狩野沢温泉―津南駅(長野県、新潟県)
かつて磐越西線は「あがの」(仙台駅―会津若松駅―新潟駅)、飯山線は「うおの」(長野駅―新潟駅)などの急行列車が走り抜け、東北や長野県から新潟県への地域間移動のルートとして活用されてきた。
また2011年の東日本大震災後は、被災で運休を余儀なくされた東北本線を迂回して、首都圏から東北方面へ石油を送り込むルートとなったのも記憶に新しい。
しかし、クルマ社会化と高速道路の延伸・高速バスの登場で、急行列車は次々と廃止に。鉄道の役割は地域間の輸送からローカル輸送に変わってしまった。ここ30年少々で、乗客数は磐越西線が93%減、飯山線が94%減となった。
新潟県内の交通事業者は、経営不振による何らかの救済を軒並み必要としている。
JR東日本が「ご利用の少ない線区」として挙げた鉄道路線は、磐越西線・飯山線以外にも羽越本線・只見線・米坂線(2022年8月から災害で運休、復旧を協議中)がある。ほか第三セクター鉄道の「えちごトキめき鉄道(旧・信越本線など)」、「北越急行」、バス会社「新潟交通」、海運「佐渡汽船」、航空「トキエア」など総じて経営が苦しい。
この環境の中で、新潟県は、2023年7月に「起債許可団体」(県債発行の際に国の許可が必要となる。北海道・新潟県のみ)に転落。今後は地方債・県債に依存した財政運営が難しくなりそうだ。
新潟県の花角英世知事は、かつて運輸省・国土交通省の官僚として「つくばエクスプレス」開業などに関わった、いわば乗り物のプロでもある。
しかし、このまま財政悪化、交通事業者の業績低迷が続くと、どの交通機関を救うのかというトリアージ(対策の優先度を決める行為)を将来的に余儀なくされるかもしれない。