傷つきやすい生徒が増えている

こうした風潮により、自己コントロール力が鍛えられない子どもたちには、傷つきやすい、心が折れやすい、忍耐力が乏しいといった心理傾向がみられやすいと推測されるが、つぎのようなデータをみると、実際にほとんどすべての校長先生がそのような印象を抱いていることがわかる。

「叱られることに抵抗のある生徒が増えていると感じる」肯定88.7%、否定2.3%
「ほめられないと拗ねる生徒が増えていると感じる」肯定50%、否定15.9%
「傷つきやすい生徒が増えていると感じる」肯定88.7%、否定0%
「心が折れやすい生徒が増えていると感じる」肯定84.1%、否定2.3%
「生徒の忍耐力が低下しているのを感じる」肯定95.5%、否定0%
写真=iStock.com/takasuu
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さらに、生徒の保護者に関するつぎのようなデータをみると、ほとんどすべての校長先生が、子どもに甘く、心を鍛えるということに目が向いていない保護者が多いと感じていることがわかる。

「子どもに甘い保護者が多いように思う」肯定90.9%、否定2.3%
「心を鍛えるという面に価値を置かない保護者が多いように思う」肯定79.6%、否定0%

「子どもに我慢させる」という発想が乏しい

いくらちゃんと宿題をしたり授業をまじめに聴いたりしていても、非認知能力がしっかり身についていないと、何かで行き詰まったときに粘ることができなかったり、思い通りにならないときに我慢できなかったり、苦しい状況に耐えられずに心が折れてしまったりと、将来困ることになりかねない。

たとえば、注意や叱責しっせきを自分の成長の糧にする気持ちの余裕がなく、ただ傷ついてしまう。叱られたり、よくない点を指摘されたりすると、そこを反省して直そうという思いよりも、不快感の方が強く、反発したくなる。あるいは、傷つきに耐えられず、その場から逃げ出す。これではなかなか成長することができない。

親が子どもにどのようなことを期待するかを調べた国際比較調査がある。それをみると、「親の言うことを素直にきく」ことを子どもに強く期待する親は、フランスで80.1%、アメリカで75.2%と8割近い比率なのに対して、日本では29.6%と著しく低い。欧米の親は子どもは親の言うことをきくものだと思っているのに対して、日本の親はそのように思う親は少数派にすぎない。子どもに我慢させるという発想が乏しいのである。