南海と京阪の違い

次に輸送人員から見る定期券利用者の割合(2021〈令和3〉年度)を見ていく。高い順から近鉄65パーセント、南海64パーセント、阪神57パーセント、京阪56パーセント、阪急55パーセントとなる。一般的に、ローカル線は定期券利用者の割合が多くなりがちだ。

このような視点で見ていくと、近鉄・南海はローカル線が多いことになる。近鉄は先述した通り、もともとローカル線が多いが、南海は南海本線・高野線であっても末端区間はローカル色が濃くなる。また、汐見橋しおみばし線や加太かだ線をはじめとするローカル支線も多く、定期券利用者の割合を高めているといえよう。

また、京阪は京津けいしん線、石山坂本線といったローカル色が濃い路線を有しながら、定期券利用者の割合は意外と低い。ひとつには、大阪から京都への観光需要が挙げられる。京阪では快速特急「洛楽らくらく」や有料座席指定車両「プレミアムカー」など観光輸送に力を入れている。

このように、輸送人員の変遷や定期券利用者の割合からは、各鉄道会社の現状やさまざまな戦略が読みとれる。10年後はどのような成績になるのだろうか。

21世紀最も成長した関西の路線

コロナ禍の影響は別にして、21世紀において関西大手私鉄のなかでもっとも成長した路線は阪神なんば線だろう。阪神なんば線は尼崎~大阪難波間を結ぶ。2009(平成21)年に西九条~大阪難波間が開業し、悲願の全通を果たしたのだ。

同線の開業により、阪神と近鉄との相互直通運転が実現し、神戸三宮~近鉄奈良間において直通の快速急行が運行されている。阪神なんば線は、開業時から関西経済に多大な貢献を果たしてきた。

開業翌年の2010(平成22)年3月に公表された住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)のレポートによると、阪神なんば線開業にともなう2009~2010年の1年間における経済効果は76億円になったという。

また、阪神なんば線開業からの1年間で梅田駅(現・大阪梅田駅)の1日乗降客数は約1万8000人減少したが、阪神線からの大阪難波駅の1日あたりの乗降客数は2万人強であった。つまり、阪神の利用者は差し引き1日約2000人、年間では73万人増加したことになる。

さらに、阪神は2009年に「第8回日本鉄道賞」、2010年に「関西財界セミナー賞2010」大賞を受賞した。