試行錯誤に頼ってはいけない

私がよく受けるもう1つの質問は、「失敗を避けていると、リスクを恐れるようになるのでは? イノベーションは元来リスクを伴うものだから、失敗を恐れずにチャレンジすべきではないのか?」というものだ。実際シリコンバレーには、「すばやく頻繁に失敗せよ」というアドバイスさえある。新しい試みの1つひとつを実験とみなせば、失敗する実験もあるだろう。

だがThink Biggerは、イノベーションに組織的、体系的に取り組むことによって、失敗の可能性を減らそうとする。

たとえば科学でいう実験には、よい実験もあれば悪い実験もある。そして悪い実験は、できる限り避けたい。

Think Biggerはそれを避ける方法を教える。試行錯誤に頼ってはいけない。「500種類のキノコを試す」のは悪い実験だ。よくても非効率で、悪くすれば死んでしまう。これに対しThink Biggerは、成功確率が高い、優れたアイデアを数多く生み出す。こうしたアイデアを実行に移すのも「実験」だが、過去に成功した戦術という強力な基盤の上に立っているから、成功確率は高い。

臆することなく戦略的に模倣する

一般に、スタートアップの9割は倒産すると言われる。失敗したアイデアを知ることは参考にはなるが、それを選択マップに入れてはいけない。実験が失敗しない確率を高めなくてはならないからだ。アイザック・ニュートンが土台としたのは、失敗した実験ではなく、先人たちの業績だった。

過去の成功物語の一部をただ模倣するだけでは、成功は保証されない。ネットフリックスの立ち上げは実験だったが、手堅い戦術を基にしていた。科学者は実験を「実行」することより、それを「設計」することに多くの時間をかけている。失敗を恐れてはいけないが、失敗を求めるのも間違いだ。

Think Biggerでは実験の成功確率を高めるために、手堅い要素を使ってアイデアを築いていこう。

くり返しになるが、トロッターに倣って「臆面もなく盗む」の精神で探索しよう。ここからはネガティブな意味合いを和らげるために、「戦略的模倣」と言い換えることにする。耳慣れない言葉かもしれないが、実はあなたは生まれてからずっと、話す言葉に始まり、すべてを「戦略的模倣」してきた。あなたは母国語を発明しただろうか? まさか。誰かの真似をしたのだ! あなたが知っているほとんどのことについても同じだ。

「模倣は最大の賛辞」ということわざもある。私たちはどんな形態であれ、模倣によって、文化や規範、社会通念を獲得し、伝える。