駅伝というスポーツが世界に広がり国際大会化の可能性

それはそうでしょうね。読売新聞にとっては虎の子のコンテンツですからね。では、読売新聞が動けば、ルールが変わるかというと、恐らくそうでもない。日本は、野球界もそうですけど、誰かが責任と権限を持ってものごとを動かすようになっていませんね。なんとなく歴史と伝統という空気のなかで物事が進んでいく。だから改善しようとしても、なかなか進まない。

――最後に、箱根駅伝の未来がどうなっていくと思われますか? またどのような姿を期待したいですか?

期待感としては、先ほども言いましたが、放映権料を入札させてもらいたいですね。箱根駅伝には日本の大学スポーツ、ひいてはスポーツビジネスを変える力があります。日本最大のアマチュアスポーツイベントで、2日間、14時間くらいの番組で、30%近い平均視聴率を取るわけですから。日本のスポーツを産業化するための可能性が詰まっている。今の権利の問題にも注視してもらいたいです。

酒井政人『箱根駅伝は誰のものか「国民的行事」の現在地』(平凡社新書)

――もし「DAZN」や「Netflix」で放映されることになれば、放映権料が高騰するだけでなく、海外でも人気が出る可能性がありますね。

あります、あります。駅伝というスポーツが世界に広がり、国際大会に昇華する可能性もありますよ。興行化という意味では、各中継所でチケットを売ったらどうかと思いますね。

――花火大会などの有料席という考え方ですね。

まさにそうです。各中継所、2000人に平均1万円で売るとすれば、10区間あるので2億円になりますね。いずれにしても市場にさらすことが一番いいんですよ。市場で取引されるようになるためには、組織や規則を整備しなければいけませんから。もしも改革をしたいということであれば、そこからでしょうね。

小林至(こばやし・いたる)
学校法人桜美林学園常務理事・桜美林大学健康福祉学群教授。
1968年、神奈川県生まれ。博士(スポーツ科学)、MBA。1991年、千葉ロッテマリーンズにドラフト8位指名で入団(史上3人目の東大卒プロ野球選手)。1994年から7年間米国在住、コロンビア大学でMBA取得。
2002~2020年、江戸川大学助教授~教授。2005~2014年、福岡ソフトバンクホークス取締役。現在は、立命館大学、サイバー大学で客員教授。大学スポーツ協会(UNIVAS)理事、世田谷区スポーツ推進審議会委員。『サクッとわかるビジネス教養 野球の経済学』(監修・新星出版社)など著書、論文多数。
関連記事
【前編】「口座は個人名で金銭管理を好きなようにできる」興行最高峰・箱根駅伝主催が任意団体の関東学連でいいのか
大学生が走るだけなのに、なぜこれほど人気なのか…箱根駅伝が「正月の風物詩」になった恐るべき理由
箱根駅伝常連校の監督の給料はいくらなのか…アメリカの大学のアメフト、バスケ指導者との驚愕の格差
青学の駅伝ランナーが「トークもうまい」のは偶然ではない…原晋監督が選手探しでひそかに重視していること
これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと