放映権で収益がもっと出たら、大学に分配すればいい
まずは大学に分配すればいいと思いますね。施設を整備し、指導者やスタッフを雇い、選手をスカウトして訓練する。すべての費用は大学が払っているわけですから。次に、普及でしょう。選手とファンを含めた支援者がいなければ競技は成り立ちませんからね。各地にある競技場の整備などに使っても良いでしょう。そういうことに使うんだったら、いくら稼いでも、文句を言うヒトはいませんよ。
――箱根駅伝は関東ローカルの大会です。全国に門戸を開いた方が良いのでしょうか?
箱根は、コンセプトとマーケティングの力でここまで大きくなったが、主催者は、法人格のない、関東の有志の集まりですから、どうなんでしょうね。陸上競技をより広範に普及するためなら、全国化するのが良いのかもしれませんが、関東学連は陸上競技を代表した団体というわけではない。伝統と歴史が売りの興行として考えるのであれば、もっと絞り込むなんて考えもあるかもしれません。
例えば、東京六大学野球は、日本で最も人気のある大学野球リーグですが、レベルは東都大学野球の方が上といわれています。では、名実ともに日本最高峰の野球リーグとするために、加盟大学を増やして、2部制にした方が良いという考え方はあるでしょうが、加盟六大学の当該関係者でそう思うヒトは誰もいません。メンバーを変える、あるいは増やす議論は、今後も出ないでしょう。
箱根は、伝統校に、関東のブランドと認知を高めたい新興大学が、資金力で迫るという、いまのままのカタチが良いと関係者が考えるならば、それはそのまま変わらないでしょう。読売グループの興行力で、国民的コンテンツになってしまったがゆえに、話が錯綜するんでしょうね。
国民的コンテンツになってしまった以上は、社会的使命がある、だから全国化して、もっと陸上競技の振興のために寄与すべし、あるいは大学スポーツの振興に寄与すべし、という考えも、わかりますが、加盟校からすると、競争が激化するともっとカネがかかるし、勘弁してくれ、と思っていることでしょう。
UNIVASの理事として、大学スポーツの振興に関わっている立場からすれば、箱根には、組織や権利を整備して、大学スポーツの新たな可能性を切り拓くパイオニアになってほしいと期待する気持ちはありますよ。
NCAAの目玉イベントに「March Madness」という男子バスケットボールトーナメントがあるんですけど、1500億円ぐらいを生み出すんですよ。放映権料だけで1000億円ぐらいあります。入札させて高く売っており、入場料もとびきり高く、ショーアップされた、プロの興行なのですが、それについて誰も文句は言わない。
価値あるものに対価を払うのは当たり前だし、儲けたカネでNCAAが何をするのか明確にしているからです(NCAAは大会などで得た収入のうち、3000億円以上を毎年15万人の学生に奨学金として支給している)。オリンピックも「スポーツの普及」という大義名分がある。
箱根駅伝にも、組織と権利と大義をはっきりさせて、もっと儲けて、大学スポーツの新たな可能性を切り拓いてほしいですね。
――例えば、地方活性化と、収益化を目標に、関東地区以外にも門戸を開いて、放映権を高く売って、そのお金を主役の学生に還元、普及にも使用するなど、より具体的な使い道を示せば、良いわけですね。
そういうことです。今は読売新聞と日本テレビの興行ですが、箱根駅伝は誰のための大会なのか。青山学院大学の原晋監督が、関東学生連合チームについて声を上げましたが、箱根駅伝は、ある種、日本を象徴していますよね。つまり、主語がない。誰がなんのためにやっているのかわからない。全国化の話もなぜ出てきて、どういう議論をして、なぜ100回大会だけの限定になったのか。よくわからないんですよ。箱根駅伝は称賛もあれば、批判もある。でも誰がそれを受け取るのかもわからないですね。
――関東学連には読売グループの社員が出向して、なかに入って活動しています。結局は読売グループの意向が強いんじゃないでしょうか。