環境相が出した駆除の“トンデモ条件”とは
11月28日、ニーダーザクセン州(図表1の地図の表記ではNI)のククスハーフェンで、2018年よりボランティアで、狼の生態を調査し、畜産農家のアドバイスをしていたクリスティアン・カットという人が、政府の環境保護政策に抗議して、職を退いた。ククスハーフェンでも、約10年前から狼が出没するようになっており、最近、家畜の被害が急激に増えていた。
氏が辞職に際して認めた文書には、政府に対する不満が満載だ。「美しい田園風景の中で働く人々と、その家畜を支えるために、政府は態度を明確にする必要があった」。しかし、「私がこの課題に取り組んでいた5年半の間、政府は何一つ持続的なことはしなかった」。
もっとも、氏の辞職の直接のきっかけは、10月になってレムケ環境相が持ち出した「狼の殺処分」だったようだ。というのもレムケ氏は、6月の協議の評判が悪かったためか、狼の射殺を例外的に認めるための条件を提示した。ところが、これでカット氏は、ついにぶちぎれたらしい。
どんな条件だったかというと、狼が羊を殺したことがわかれば、その後、21日の間に、その狼を射殺することが許される。その場合、これまでのように、その狼が本当に羊を殺した犯人であるというDNAの証明は不要になる。ただし、射殺場所は、狼が羊を殺した現場から1000m以内に限られる。
猟師は放牧地を一晩中見張らなければならない?
カット氏は書く。「どの猟師が“犯行現場”である広大な放牧地を見張り続けるというのだ。しかも、狼が戻ってくるのは必ず夜で、猟師は月の光が必要となる。その他のところを探すとしたら、今度は1000mというのが足枷だ」。要するに実行不能であり、「これで住民を宥められると思っているのか」と激しく非難している。
カット氏によれば、近い将来、狼の駆除は避けられないことは周知の事実だ。だからこそ、急激な増殖を防ぐため、他の野生動物の駆除と同じく、幼獣を殺さなければならない。そして、その上で、狼の行動に変化が現れるか、現在のような無遠慮な行動にブレーキがかかるかなどを観察しながら、最終的に受容可能な頭数を定め、計画的に駆除しなければならない。
とにかく、それを一刻も早く始めることが重要で、「それ以外はすべて無意味で、実行する意味がない」とカット氏。実は、森を散策していたら狼が異常に接近してきたとか、森で乗馬をしていたら、ずっと付いてきたというような怖い話も、すでにある。
ただ、環境省の見解は天と地ほどかけ離れている。再びホームページからの引用。
「現在、狼はドイツの一部で再び見られるようになったとはいえ、絶滅危惧種であることに変わりはない。目標は、狼の良好な保護状態を達成することである」