触診だけで乳がんを指摘することは困難

もちろん現状、対抗馬となるような検査手法はありませんから、マンモグラフィーは今後もしばらく乳がん検診の中心であり続けるでしょう。さて、現在の日本において、自治体が主催する検診(対策型検診と呼ばれます)では、40歳代以上の女性を対象に2年ごとの乳がん検診が推奨されています。かつては触診とマンモグラフィーを組み合わせた乳がん検診が広く実施されていましたが、触診で乳がんを指摘することは困難であり、現在では積極的には推奨されていません。

他方、人間ドッグを中心としたその他の乳がん検診においては、マンモグラフィーの他にも、触診や乳房超音波検査、乳房MRI検査、PET検査など様々な方法が実施されています。ただし、これらの検査を単独で実施することは適切ではありません。マンモグラフィーにこれらの検査を組み合わせることで、上乗せの効果を期待するというのが現在の乳がん検診における一般的な考え方です。

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乳房超音波検査の組み合わせは検診レベルでは最適

このうち、マンモグラフィーとの組み合わせとして国内で最も導入が進んでいるのは、乳房超音波検査です。乳房に超音波を当て、その反射波を画像に映し出すことで乳房内部の状態を知ることができます。乳房を挟んで撮影するマンモグラフィーと比べ、患者さんのストレスが少ないのが特徴です。

乳房超音波検査については、2000年代にJ-START試験と呼ばれる重要な調査が日本で実施されています。7万6196人の40歳代の女性を対象としたこの調査では、マンモグラフィーに乳房超音波検査を組み合わせることで、乳がんの発見数が増加すること、また、ステージ0または1の乳がんの発見が増加することが証明されました。

なぜ、40歳代が対象になったかと言えば、この年代は乳腺濃度が高いためにマンモグラフィー画像が読み取りづらく、診断精度が下がりやすいからです。乳房超音波検査は乳腺濃度の影響を受けにくく、体の負担も少なく簡便にできるので、この年代の乳がん検診でマンモグラフィーに組み合わせる検査としては、最適と言えるでしょう。