膵臓がんはほとんど症状がないまま進行するため早期発見が難しい。東京女子医科大学消化器・一般外科の本田五郎教授は「これまでは正常値だったのに、いきなり血糖値が上がった人は要注意だ。膵臓がんができると急に糖尿病になることがある」という――。
※本稿は、本田五郎『膵臓がんの何が怖いのか 早期発見から診断、最新治療まで』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
がんの発生経路は2つに分けられる
膵臓がんは、あらゆるがんの中でも、もっともタチの悪いがんです。ほとんど症状がないまま進行してしまい、見つかったときにはもう手術できない状態であることが少なくありません。進行すると治療が難しくなるのも事実ですが、何よりも「早期発見」がとても難しいというのが、生存率が極端に低くなっている理由です。
たしかに手ごわい相手です。
でも、だからといって“敵”の正体もよく分からないまま怖れていても、何も解決しません。ここでは、“敵”のどういう点が厄介なのか、どういう手段で“敵”に対抗していけばいいのかという具体的なことをお話ししていきたいと思います。
ですが、その前にほんのちょっとだけ基本的なことを解説いたします。
これは、膵臓がんに限らず言えることですが、がんの発生経路は大きくふたつに分けられます。ひとつは、初めの遺伝子ミスコピーでちょい悪の不良になって、これらが頻繁に細胞分裂を繰り返すうちに、さらに新たな遺伝子ミスコピーが何度か加わることで、本物の不良になって、チンピラ、やくざへと、ある程度時間をかけて成長していく経路(段階的発がん経路)です。