症状が続くときは様子見をせずに早めに診察へ

次に背部痛についてですが、背部痛にはふたつのパターンがあります。

ひとつは膵炎による背部痛で、膵管が詰まって流れが滞ることで背中が痛くなるパターン。このパターンは早期の膵臓がんでも現われることがあり、この症状で早期膵臓がんを見つけられたなら、かなりラッキーです。

もうひとつのパターンは、がんが進行してから現われる背部痛です。膵臓の背側には、おなかの中のいろんな臓器に向かう太い動脈が通っていて、それらの動脈の周りには、おなかの臓器の動きを制御する自律神経がツタのように絡みついています。

膵臓がんが進行すると、がんがこれらの神経伝いに染み込むように広がっていきます。

自律神経にはおなかの調子を脳に伝えるための感覚神経も含まれていて、それに乗って痛み信号が脳に伝わると、これが背中の痛みとして感じ取られるのです。残念ながら、こちらのタイプの背部痛で見つかった膵臓がんは、かなり進行しているので、普通は手術による切除はできない状態です。

とにかく、黄疸や腹痛、背部痛が出たときには、まだ手術が可能な段階かもしれません。症状が続くときは、様子を見たりせずに早めに診察を受けることをお勧めします。

急に血糖値が高くなった人も膵臓がんを疑ったほうがいい

それから、多尿やのどの渇きなど、高血糖による症状にも注意しましょう。膵臓がんができると、急に糖尿病になったり、糖尿病を持っている人であれば数値が急激に悪化したりする場合があります。

原因はよく分かっていませんが、膵管が狭くなって膵液がうっ滞すると狭窄きょうさく部よりも上流の膵臓が萎縮します。これによって膵臓機能が一気に低下することは十分に考えられることです。

本田五郎『膵臓がんの何が怖いのか 早期発見から診断、最新治療まで』(幻冬舎新書)
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たとえば、これまで糖尿病など気にしたことがなく、普通の血糖値だった人が、急に高い血糖値を指摘された場合などは要注意です。また、もともと糖尿病の治療をしている人で、高めでもそこそこ安定していた血糖値が、思い当たること(食べすぎや運動不足など)は何もないのに、急に不安定になって高い数値ばかり出るようなときも注意が必要です。このような場合は、膵臓がんを疑ってすみやかに精密検査を受けましょう。

膵臓がんが進行してくると、黄疸や腹痛、背部痛、腰痛以外にも、食欲低下、体重減少、腹水、消化管からの出血、腹部に硬い塊を触れるといった症状が現われてくるようになります。ご想像の通り、こういった数々の症状が現われたときには、通常はかなり進行したステージになっています。

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