超音波検査にはメリット・デメリットがある

一方、J-START試験は乳房超音波検査を上乗せすることによってどの程度の乳がんを追加で発見することができるかという疑問に答えるためにデザイン・実施された試験であり、死亡率減少効果は主要な評価項目として組み込まれませんでした。そのため、同試験では、乳房超音波検査を上乗せすることによる死亡率減少効果は、示されませんでした。また、乳房超音波検査は、術者の力量や経験に診断精度が影響されやすい側面もあります。そのような事情があり、超音波検査は今のところ、対策型検診で広く推奨されるには至っていません。

なお、乳房超音波検査のデメリットとして、乳がん以外の良性病変が指摘されやすいことも挙げられます。診断を確定するために侵襲的な追加検査(針生検等)を実施するケースが増えたり、数年間にわたって半年ごとに検診を受診していただく必要が生じたりします。

このように乳房超音波検査は、メリット・デメリットを医療者と相談しながら、実施を判断することが重要です。

乳房超音波検査
写真=iStock.com/PonyWang
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「痛み」の緩和にはいくつかの方法がある

海外では、乳房超音波検査は積極的に実施されておらず、代わりに広く実施されているのが、MRI検査です。ただ、乳がん発見のためのMRI検査では造影剤を用いるのが基本であり、検診レベルで実施するにはいささか侵襲が強すぎると言えます。また、検診で行うには一回あたりに時間がかかりすぎるという問題もあります。そこで一般には、乳がん関連因子などを持つなど、乳がん発症のリスクが高い女性に限って造影MRI検査が実施されています。

なお、乳がん検診において、マンモグラフィー以外の様々な画像検査が実施されている一つの理由として、痛みが挙げられます。マンモグラフィー実施時の痛みを緩和するには、月経前や月経中のマンモグラフィーの撮影を避けることやカフェインの摂取や喫煙を控えることが有効と考えられています。また、放射線技師とコミュニケーションを取りながら撮影してもらうことも有効でしょう。