これからの時代を生き抜くために若者に必要なもの

【岡田】今までで一番リスキーだったのは、5周年記念イベントで行った「海遍路/山遍路」という20泊21日の野外体験活動です。高校生と大学生の7人のメンバーが320kmを移動するんです。今治からテントを担いで徒歩で香川県まで行って、そこからシーカヤックで本州に渡り、本州から無人島伝いに今治まで戻ってくるというとんでもないプロジェクトです。

高濱正伸さん(撮影=市来朋久)

僕は環境問題にも40年ぐらい取り組んでいるのですが、もはや「地球環境は閾値いきちを超えたな」という感覚があります。昨今の日本は、外気温が40℃を超えることもある。もう元には戻れないけれど、かといって解決のためのモデルもない。

じゃあ、こんな時代を生き抜いていくために、若者に何が必要かといったら、主体性、適応力、過酷な環境に対する心身両面のタフネス、そして各々おのおのの違いを認めながらコミュニティーをつくり上げていく力だと思うんです。それには、野外体験活動が一番いいんですよ。

【高濱】僕の場合、どちらかというと「思考力」への関心から野外体験に入っていったんです。誰にも浮かばないアイデアがパッと浮かぶ力、言語化して説得し周りを巻き込んでいく力、そういう力は野外体験の遊びの中でこそ育まれるんじゃないかと思ったんです。で

も、それってかなりハイレベルな話で、そもそも人間力がえらく落ちているんですね。友達をつくれないとか、人を口説けないとか、実際、引きこもりもものすごく増えている。

だから花まる学習会の野外活動は、友達と一緒の申し込みはナシなんです。まったく知らない人たちと野外体験で寝泊まりして、新しい友達をつくる。小学校の低学年が対象なので、最初は「ママ、ママ」って言うわけですが、2泊3泊するうちに自力で人間関係をつくれるようになっていきますね。

【岡田】人間力の話が出ましたが、東日本大震災の時に、野外体験をやっている僕の仲間が翌日から支援に入ったんです。その時、4日間、完全に孤立していた村があって、食糧やら水やらを持って入っていったら、現地の人たちは自力で山から水を引いて火をおこして、海の幸、山の幸で宴会して風呂まで入っていたって。これこそ生きる力ですよ。地方にはまだそういうたくましさと知恵が残っているんです。

【高濱】すごいですね。まさにそういう時に出てくる力こそ、探究で培われたものなんですよ。子供に選ばせ決めさせて親は口を出さないで!

【岡田】先ほど主体性が大切だと言いましたけれど、子供の主体性って、放っておかないと絶対に培われませんよね。

僕はなんとか子供を3人育てましたが、自分の子供にはサッカーは教えられないと思いました。他人の子だったら、うまくいったら「おお、いいぞ、よしよし」、失敗したら「ああ、残念だったね」なんて言えますけれど、自分の子供だと、「なんで、できないんだよ!」なんて怒鳴ってしまう。

親は「こうあるべきだ」という自分の価値観をわが子にはぶつけてしまうから、なかなか放っておくことが難しいんです。