バッテリーやモーター製造企業の支援も強化

EVメーカーに加え、中国はパーツ、部材メーカーに対する補助金政策も強化した。主な企業として、世界最大の車載用バッテリーメーカー“寧徳時代新能源科技(CATL)”がある。EVのコストの4割程度をバッテリーが占める。足許、CATLはタイ石油公社(PTT)の子会社に車載用バッテリーの組み立て技術と生産設備を供与することを明らかにした。

リチウムイオン・バッテリーの絶縁材を生産する“上海エナジー”、モーターなどEV駆動装置を手掛ける“浙江方正電機(セッコウ・ファウンダー・モーター)”などへの国家支援も強化した。そのため、主要先進国の企業に比べ中国企業の減価償却などのコスト負担は低い。その分、価格を引き下げることができる。

共産党政権は、世界のEV市場で自国企業によるトップシェアの確保を目指した。BYDなどの販売増加ペースを見る限り、当面、世界の自動車販売市場における中国の存在感は高まるだろう。

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欧米vs.中国のEV戦争は激化する恐れ

現時点で、補助金にささえられた価格競争力を武器に世界のシェアを狙う中国のEVメーカーに、主要先進国の自動車メーカーが真正面から競合することは難しい。欧州委員会は中国EV補助金に関する調査を開始した。

欧州経済を支えてきた“独仏などの自動車メーカーが生き残れなくなる”との危機感の高まりは強い。フォンデアライエン委員長の発言を確認すると、欧州委員会が中国製のEVに対する関税を引き上げる可能性は高い。

米国はEVの生産に対する補助金を支給している。条件は、車載電池の一定割合を北米で調達する、バッテリーに使われる重要鉱物の一定割合を米国、その自由貿易協定(FTA)締結国から調達することなどだ。米国やEUがこうした基準を引き上げたり、中国企業による国内工場用地の取得をより強く規制したりする可能性も高い。

一方、中国も黙ってはいない。9月25日、何立峰副首相は欧州委員会の調査に懸念を表明した。中国で人気の高い高価格帯のドイツ製SUVなどに対する不買運動のリスクは高まっている。報復関税を実施することもあるだろう。EVは、欧米と中国の貿易戦争が激化する、主要なプロダクトの一つになる可能性が高い。