「良い企業ではないとしたら、悪い企業に投資するのか」と言われそうですが、誤解を恐れずにお答えすると、その通りです。

と言っても「悪い企業」という表現があまり好きではないので、「伸びしろ企業」といいましょうか。たとえばこういうイメージです。

「事業参入している領域に成長の余地がほぼなく、経営陣は改革の気勢に乏しく、それが社員にも伝わるのか、モチベーションも低い。数字を見ても、売上や営業利益の改善は見られず、このまま永遠に変化しないのではないか、というような企業」を思い浮かべてください。

ところが、そのような「伸びしろ企業」でも、経営者が交代して、ガラリと会社が変わったりします。経営者の交代以外にも、たとえば大株主が変わるとか、人事評価制度を変えたことで社員のモチベーションが上がったとか、オフィス環境を見直したとか、世代交代が生じたとか、さまざまな要因で、「伸びしろ企業」が良い企業に生まれ変わるケースもあるのです。

会社が変われば、株価は強く反応する

たとえば鉄道、製鉄、非鉄金属、造船など、特に日本の高度経済成長期を支え、過去の成功体験に囚われ続けているような業種の企業で世代交代が起こると、会社が一気に変わる可能性があります。日本の古い企業でも、40代、50代が経営トップやマネジメント職に就くなど、会社を牽引しているところが徐々に増えてきました。

また、技術開発の結果、全く違う会社になるというケースもあります。たとえば、もともとは合成ゴムを製造していた会社が、合成ゴムの副産物で液晶フィルムの製造に成功したことから、ファインケミカルの企業に大転換を果たしたケースなどです。

このように、会社が大きく変わると、株価は強く反応します。仮に世代交代や経営者交代、あるいは技術開発によって企業価値が5割も改善されたら、株価も相応に跳ね上がります。

写真=iStock.com/franckreporter
※写真はイメージです

もちろん、一夜でガラリと変わるようなケースは稀かと思いますが、岩盤規制(役所や業界団体などが改革に反対して緩和や撤廃が容易にできない規制)よろしく、それまで全く変化がなかった会社が一部でも変わり始めると、徐々にではあっても利益率が改善されたり、初めはゆっくりでも成功体験が拡散して改善が加速するなど、いろいろなパターンがあるように思います。株価は、その業績の変化、あるいは市場の期待値を通じて、「良い会社」を大きく上回るほどの、「株価変化」を示すことがあります。

株価にとって「変化率の大きさ」は命である

海外の投資家から見て、決して「まとも」とは言えなかった日本企業が、正常化に向けて動き出したのだとしたら、これはものすごく大きな変化になり、株価も大きく上昇するはずです。つまり、変化の度合いが大きければ大きいほど、株価も大きく上昇するのです。株価にとって、「利益の変化率」の大きさは命、といってもよいくらいです。