テスラやアップルは「綱渡り状態」
ウイズダムトゥリーの任麗倩は「中国の消費市場で金儲けすることは、中国国内インフラ、例えば製造業のインフラ施設方面で、彼らに利益をもたらす。企業としては、地政学は一つの課題だが、やはり中国の利点のいくつかは利用したいと思っている」と言う。
「最終的には、この非常に困難な環境の中で、企業とそのCEOたちは、米国と中国の法律をできるだけ遵守しながら、目下の中国に関するネガティブな情緒にも非常に注意しなければならない」
ウェイドブッシュのアイブスは「米国と中国の地政学上の緊張情勢は激化しており、テスラやアップルは、まさに一種の綱渡り状態だ。だが中国での成功と生産のバランスをとれば、中国は需要と供給両方において依然として重要な市場なのだ」と言う。
マスク氏の行動は「言論の自由」と矛盾
マスクは同時に、SNS「ツイッター(現在は「X」、以下同)」のオーナーでもある。彼の中国訪問は、彼の「言論の自由絶対主義」と矛盾していると批判が寄せられている。
マスクは訪中の間、この旅に関することはツイッターでほとんど発信せず、ただ訪中が終わった時に、テスラ上海工場の従業員との記念撮影を発表した。
だが、マスクは中国のファイヤーウォール内にあっても、ツイッターで外国の友人とやりとりしており、米国国内のテーマについてもツイッターで論評していた。
中国のファイヤーウォールはツイッターを遮断しているが、VPNなどのツールを使えば使用できる。
人権組織の「ヒューマンライツ・ウォッチ」中国部シニア研究員の王亜秋はツイッターで、「自称言論の自由主義者(マスクのこと)は世界でもっともセンサーシップの厳格な国家の指導者に、言論の自由の手厳しい意見を提示し、自分の意見を言っただけで投獄されている中国人の釈放を呼びかけてほしい」と、皮肉っていた。
アメリカ大統領選の共和党予備選挙に立候補している起業家、ヴィベック・ラマスワミはツイッターで「中国共産党は米国企業家を道具として操っている。マスクが訪中しデカップリング反対を訴え、米中はシャム双生児だなどという一連の言動は懸念される」と訴えた。
さらに「中国共産党が私たちの最も著名なビジネスリーダーや著名人を傀儡にして、自分たちの課題を推進しようとするとき、これは米国にとって本当にリスクとなる。これは世界の認識を中国に有利なように傾斜させる。残念なことに、その効果がまさに現れている」と警告した。
著名企業家たちは、人権や言論の自由という米国の価値観を裏切ってまで、習近平「独裁新時代」に賭けて、協力的な姿勢を続けるのだろうか。
習近平独裁の寿命は、国内経済の行方、そしてそれは西側を中心としたグローバル経済の関わりの影響が大きいだろうが、その影響力を左右する存在が、米国を中心としたグローバル企業のキーマンたちであるとするならば、これは大きな不確定要素として注視する必要があるだろう。