池の深さが急に変わる

3人は岸から50メートルほど離れた池の中で発見されました。発見された場所では、池の深さが50センチくらいから120センチくらいに急に変わるので、これが溺れた原因だったと考えられます。

この池には、無数の亀が泳いでいます。岸に人が来ると、亀が頭を水の上に出して、一斉に人を見ます。「人懐っこい亀だな」と近づくと、亀はそのままバックするように器用に泳いでいきます。後ずさりするわけです。

水の中に入ると、大人のせいぜい膝の下の深さなので、歩くことができます。水の中を歩きながら亀に近づこうとすると、やはり亀は後ずさりして、歩いてくる人とは一定の距離を保とうとします。「浦島太郎の気分だ。まさか子どもたちはこうやって亀を追いかけたのか?」と想像した瞬間でした。

複数の子どもが溺れる「後追い沈水」

複数の子どもが水の事故で犠牲になる時、ほとんどが「後追い沈水」という現象であの世に連れていかれてしまいます。

この明石市の池で、何が起きたか推測してみたいと思います。

画像3に示すように、岸から50メートルほど離れたところで、まず1人目の子どもが120センチほどの深みにはまります。深みにはまれば、一瞬にして水に沈んで姿が消えます。

それを見た次の子どもが1人目の姿を追って深みに近づき、やはり沈みます。さらにもう1人も同じように沈みます。これを見ていた4人目の子どもは「危ない」と感じて、池から上がり、近くの家にお兄ちゃんたちの緊急を伝えにいったのでしょう。

提供=斎藤秀俊さん
【画像3】後追い沈水による多重水難が発生する理由

岸から急に深くなる「谷池」

谷池は、全国的に山沿いで見られる池です。山間の谷の地形を上手に使って、谷の下流に土を盛ることで堤体を作り、水を堰き止めたため池です。皿池と違って、どちらかというと住宅街からは離れたところにあるため池です。

皿池と違い、岸から急に深くなる特徴を持ちます。例えば堤体の部分には急な斜面があって、さらに漏水を防止するために遮水ゴムシートがかぶせてあったりします。

このゴムシートが厄介で、乾燥していると滑らないのですが、雨が降った後など濡れていると簡単に滑ります。そしてここからしばしば人が滑落し、溺れるのです。

画像4をご覧ください。ここでは2021年5月に親子が釣りをしている時に落水し、溺れて亡くなりました。

上の写真(a)は、池が満水時の様子です。黒いゴムシート上の、黄色の丸のあたりで釣りをしていたと思われます。

下の写真(b)は「かいぼり」の際の池の様子です。

写真提供=斎藤秀俊さん
【画像4】2021年に親子が釣りをしていて亡くなった、香川県丸亀市のため池(a)満水状態、黄色の丸から滑落したと思われる(2021年7月撮影)。(b)かいぼり状態、黄色の丸の地点から滑落したと思われる。赤の丸印は(a)の撮影ポイント(2022年1月撮影)

どうでしょうか。上の写真(a)ではそんなに深い池のように見えないのですが、下の写真(b)ではゴムシートの部分がほんの一部分で、その深さからまさに「底なし沼」の様相だということがわかります。

もともとこんなに深いとわかっていたら、親子はここに近づかなかったかもしれません。