ネットに移ってもNHKが見られない2つの理由
おそらくNHKはこう考えているのだろう。NHKが視聴されないのは、放送の持つ限界が原因に違いない。つまり、放送は、その時間にテレビの前にいなければならないが、現代の人々は忙しくてそれができない。また、放送では、早送り、巻き戻し、一時停止ができない。若者がよくやる倍速視聴もできない。面白ければ続けて見たいのだが、それはできず、次の週まで待たなければならない。
録画すればこういった難点はクリアできるが、面倒だし煩わしい。NetflixやAmazon Primeなど大手動画配信サービスに慣れた人々は、これをとても不便だと感じている。これら大手動画配信サービスと同じにすれば、つまり、ネットに移れば、人々に見てもらえるに違いない。
しかしながら、そうはならないだろう。つまり、ネットに移ってもNHKを見る人はほとんど増えないと考えられる。その根拠は簡単にいえば次の2つである。
①ミレニアル世代とZ世代は、そもそもNHKが作るようなコンテンツを見ない。
②彼らの上のテレビ世代もNHK離れを起こしている。
Z世代にはそもそもテレビを見る習慣がない
①から明らかにしていこう。ミレニアル世代とZ世代が何を意味するかは次の図表1を見ていただきたい。
ミレニアル世代は、デジタルパイオニア世代といわれる。これに対してZ世代はデジタルネイティヴと呼ばれる。前者はその成長期にインターネットが影響力を強めた世代だ。後者は、生まれたときからインターネットがあり、物心ついたときにはスマホがあった。さらにいえば、前者はインターネットを使うようになってテレビから離れた世代であり、後者は最初からメディアといえばテレビではなく、スマホだった。
私は早稲田大学のマスメディア研究ゼミを25年にわたって担当したが、その経験から知ったことは、ミレニアル世代が大学入学や就職を契機にテレビを見なくなったことだ。そして、Z世代は、物心がついたときにはスマホを手にし、あらゆる娯楽やコンテンツをこのメディアを通じて得ていて、途中から失ったのではなく、最初からテレビを見る習慣がないということだ。