AIが聞いて、子供が答える。ここが画期的だ

暗く沈んでいた顔が一転して、晴々とした笑顔に変わったという。最近、小学校の授業でも、パソコンやタブレット端末を使うことが増えてきた。その多くは、検索機能を使って、答えを見つけだすのに利用されている。その方法は、百科事典や本を読んで調べるというかつての学習スタイルと、大きく変わってはいない。

しかし、このチャットを使ったAIとのセッションでは、子供のほうが聞かれる側になる。AIが聞いて、子供が答える。検索する場合と、立場が逆転するのだ。ここが画期的である。

これまで「書く力の現場」では、先生と児童との「対話」が作文に役立つという実例を紹介してきた。

しかし現実には、一般の学校の授業で、マンツーマンの対話による作文指導は、ほぼ不可能だ。ところが、チャットGPTを使えば、すぐにできてしまうのだ。

さらにこのAIの利点は、子供をリラックスさせ、やる気にもさせるところだ。

「相手が人じゃないので、むしろ話しやすいと感じるのが、今の子供です」(小沢さん)

相手は親でも教師でもない。パソコンだから、子供は上からの目線や圧力を感じることはない。そして忘れてはいけないのは、小沢さん考案のプロンプト、AIへの指示文だ。

「あなたはAI家庭教師です。私は中学一年生です。あなたは、前向きに、明るく、やさしく、親しみやすいキャラクターで、私をいつも励ましてください……」という言葉で始まるAIへの入念な指示文を、小沢さんは娘さんが使う前に、あらかじめ入力していた。

『プレジデントFamily2023夏号』(プレジデント社)

これでAIを、優秀な作文教師に変えることができたのだ。

小沢さんは「作文AI家庭教師プロンプト」(https://note.com/ume_nanminchamp/n/n3441c431aea3)を「うめ」というハンドルネームで、ツイッター上で公開しているので、参考にしてみるといい。

「親御さんも、チャットGPTを怖がらずに、30分でもいいから自分で使ってみることです」

小沢さんは、そこからこのAIの善しあしを判断することを勧める。私は「わからない」「書けない」が、すべての学習のスタートだと思う。そこから次の一歩を踏みだす手助けとしてチャットGPTの活用は力になる。作文がまったく書けない、ひと言も言葉が浮かんでこないと苦しんでいた子には、朗報だと言えるだろう。

藤原智美
芥川賞作家。1955年、福岡県生まれ。『王を撃て』で作家デビュー。『運転士』で第107回芥川賞受賞。『日本の隠れた優秀校』など教育に関するルポも多い。近刊に『スマホ断食 コロナ禍のネットの功罪』。
小沢高広
作画担当の妹尾朝子との2人組漫画家ユニット「うめ」のシナリオ担当。代表作『大東京トイボックス』はテレビドラマ化された。ほかの著作に『東京トイボクシーズ』『ニブンノイクジ』『スティーブズ』など。対話型AIや画像生成AIを作品づくりに活用。クリエーター向けに「ストーリー作成支援プロンプト」も公開している。
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