ショルツ政権の足並みを乱す環境政党

投資政策のみならず、財政政策の在り方に関しても、B90/Grは連立政権の足並みを乱している。ショルツ政権は8月16日、数十億ユーロ規模の法人税を減税することで経済成長を後押しする「成長機会法案」を審議した。自由主義の立場から「小さな政府」を良とするFDPの肝いりの法案だったが、B90/Grの反対で合意に達しなかった。

より正確には、B90/Grに属するリザ・パウス家族・高齢者・女性・青少年相が、この成長機会法案に基づく減税措置と同時に、児童手当の拡充を声高に求めたため、3党間の合意に達しなかったのである。FDPは小さな政府を良とする立場から減税は支持するが、歳出の拡大には反対の立場である。そのため、議論がまとまらなかったわけだ。

そもそもショルツ政権は、財政拡張志向の左派の2党(SPDとB90/Gr)と健全財政志向のFDPという「水と油」の関係を内包する連立政権であることから、発足の当初から早々に空中分裂するのでないかという懸念があった。実際にこれまでの政権運営で、FDPは、SPDとB90/Grが志向する政策に対して、たびたび疑義を呈してきた。

経済よりも「脱炭素」に固執

例えばSPDとB90/Grは、電気自動車(EV)シフトを重視する立場だが、FDPの主張を受けて、2035年以降も新車供給に合成燃料(e-fuel)を用いた内燃機関(ICE)車を容認する道が拓かれている。FDPは連立政権の足並みを乱すというよりも、左派勢力による理念先行の政策を、現実的な方向に修正してきたようにも見受けられる。

SPDは左派政党だが、責任政党としての経験が豊かであり、現実的な対応ができるしかし責任政党としての経験に乏しいB90/Grの場合、SPDとの違いを明確する必要があるとはいえ、理念先行の主張に終始している。これまでのところ、3党連立の足並みを乱しているのは、FDPではなく、むしろB90/Grといって差し支えない。

有権者の「支持離れ」が進んでいる

このようにドイツの政治をかき乱すB90/Grに対し、有権者の支持も離れている。政党支持率調査を確認すると、B90/Grの支持率はロシア発のエネルギーショックが生じた2022年半ばに、最大野党である中道右派のキリスト教民主同盟・同社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ2位につけていたが、今は4位にまで低下している(図表2)。

また第2ドイツテレビが8月18日に発表した世論調査では、信頼できる政治家上位5傑を占めたのは、B90/Br以外の政治家だった。具体的には、首位がボリス・ピストリウス国防相、次点はショルツ首相(ともにSPD)、3位がバイエルン州のマルクス・ゼーダー首相(CDU/CSU)、4位がクリスティアン・リントナー財務相(FDP)だった。