直接投資流入は歴史的な低水準に
ドイツの政権運営が揺れている。現在のドイツの政権は、オラフ・ショルツ首相を擁する中道左派の社会民主党(SPD)を首班とし、第1パートナー政党を環境左派の同盟90/緑の党(B90/Gr)、第2パートナー政党を自由主義の自由民主党(FDP)から成る連立政権である。その連立政権を混乱させているのが、B90/Grである。
直近では、投資政策をめぐって、SPDとB90/Grの間で軋轢が生じている。ドイツの直接投資は、現在、外国からの受け入れが急減していることで知られる。最新2023年4~6月期の直接投資流入は名目GDP(国内総生産)の0.3%と、前期(0.1%)からわずかに増えたものの、依然として歴史的な低水準にとどまっている(図表1)。
脱ロシア、中国排除で経済停滞は避けられない
ドイツ経済研究所(IW)によると、ドイツへの投資が減少している主な理由は、同国の電力事情が不安定化していることにある。2022年のドイツは、ロシア発のエネルギーショックが直撃し、歴史的な物価高騰を経験した。一方ショルツ政権は、B90/Grのイニシアチブの下、脱原発・脱炭素・脱ロシアの三兎を追う戦略に邁進した。
すでにドイツでは消費者物価の上昇は一服したが、ショルツ政権による急激な再エネ・LNGシフトで電力供給が不安定性を高めているため、エネルギー価格がエネルギーショック前の水準に戻る展望は描きにくくなっている。こうした状況から、外資系企業は、ドイツに対する投資に慎重にならざるを得なくなっているようだ。
ドイツ経済の復調には、外国からの投資流入が必要不可欠である。にもかかわらず、B90/Gr出身のロベルト・ハーベック副首相兼経済・気候相は、中国を念頭に、ドイツ向け投資に対する規制の強化を模索している。ショルツ首相や経済界は中国との関係を重視しているが、ハーベック副首相はそれとは真逆のスタンスを貫いている。