トレンディードラマにはよく留守番電話が登場した
ところで、広告コピーにあった「デート3回」の予算で買える値段とは、いくらか。定価4万4800円。1回のデート予算が1万5000円ほど。高い気もするが、特集ページを読むとその理由がわかる。デートは、まだ男性が支払うものというのが大前提とされているのだ。
ちなみに、この時代のトレンディードラマにはよく留守番電話が登場した。主人公が「現在、旅に出ています。探さないでください」など、“個性的”なメッセージを残している。主人公のキャラクターを示すツールとして、誰もがおなじみの機能を利用した。
「お元気ですか。人生楽しみましょ。その気持ちでメッセージをど~ぞ」
というのは、女優の萬田久子の留守録メッセージ。30年変えていないメッセージだという。あの時代の精神がこの留守電のメッセージにすべて詰まっている。
SMAPのブレイク前のCM「おたっくす」
1990年に家庭用ファクシミリが登場した。オフィス機器としてはすでに定着していた“ファックス”が家庭用にも展開されるようになるのが90年代のこと。最初にそれを商品化したのはシャープだった。
すでに触れたように、80年代末から家庭用の電話にも子機やコードレスタイプなど電話関連の商品がヒットしていく中で、“新しい電話”のあり方に、各社が注目していたのだ。郵便とは違い、瞬時に個人が文字や図像を送り合うことができる。そうしたコミュニケーションを想定してのものだ。
パナソニックは、家庭用ファクシミリを展開したが、そのCMにはまだブレイクしているとは言いがたい時代(1991年)のSMAPが起用されていた。
ファクシミリだけでなくパナソニックの電話関連の商品全般をSMAPが担当し、「ででんのでん」のキャッチコピーが使われていた。ファクシミリのCMでは、彼らが高校生という設定なのだろう。教室の黒板の前で、中居正広が意中の女生徒に告白をする。黒板の「OK」の文字を見て舞い上がった中居は、ファックスでデートに誘う。
彼が送るのは、「今度の日よう日、動物園へ行こう」の文字とシマウマの写真。写真はハーフトーンで美しく印刷されている。さらに動物園のマップや当日の気象図などをファックスで相手に送ったのだ。すぐに返事が返ってくるが、英語なので読めない。
OKの返事は、単なる黒板の文字の一部を消し損ねたもので、それを中居が早とちりしただけだった。返事の中身は、恐らくデートの誘いへのお断りだろう。だが、英文なので中居は気がついていない。取り囲むメンバーたちも、和気あいあいとその様子を見守っている。