なぜロングセラー商品ばかり売れるのか

まずは次の表をご覧いただきたい。アイスクリーム業界の専門メディア「アイスクリームプレス」による2022年度の売れゆきランキングだ。

上位14ブランドの平均販売年数は単純計算して約36.8年。うち7ブランドが発売40年超で、発売20年以上を含めると12ブランドもある。これ以外に別枠1位で「ハーゲンダッツ」(1984年に日本1号店)がある。毎年さまざまなアイスが登場するが、新規ブランドが定番化して上位に食い込むのは難しい。アイス業界はベテラン勢が気を吐く市場だ。

こうした人気の秘密には、次の理由が考えられる。

・手頃な価格と、どこでも買える利便性
・メーカーの創意工夫と、流通の販売戦略
・ブランドへの安心感

近年の値上げで少し高くなったが、多くの商品はまだ100~200円程度だ。その手軽さは大きい。各メーカーの創意工夫、小売店など流通の販売戦略も毎年話題となる。

筆者撮影

60億個超を売った「エッセルスーパーカップ」

同ランキング首位の「エッセルスーパーカップ」(明治)は1994年誕生。カップアイスでレギュラーは200mlの大容量だ。種類はラクトアイスだが「バニラの王道」を掲げる。

「当初から『でかい・うまい・やすい』の3拍子を掲げ、主に中学生・高校生向けに訴求しました。現在は購買層も広がっており、レギュラーサイズは累計販売個数60億個以上を記録。2022年度も前年比105%と好調でした」

ブランドを担当する明治の吉岡征史さん(グローバルフードソリューション事業本部 フローズン・食品事業部 フローズンデザートグループ)はこう説明する。

エッセルに対しては、「うまい、やすい、でかい。種類たくさん」(30代男性)、「おなかを満たしたい時にうれしいボリューム。限定品も買う」(30代女性)という声を聞いた。訴求ポイントは消費者に届いているようだ。定番フレーバーの一番人気が「超バニラ」。

「超バニラについては、定期的なリニューアルやパッケージ変更を実施しているほか、さまざまなターゲットに対するコミュニケーションで、『身近なブランド』を訴求しつつ、トライアルの獲得を図っています。特に、近年ではアレンジレシピの発信を強化し、食事シーンでの活用やアレンジする楽しみなど、新たな価値の提供に努めています」(吉岡さん)

SNSでも「久しぶりに食べるとおいしかった」と、リピート購買につながるシーンがあるという。「新規ユーザーはもちろん離反ユーザーへの訴求も大切」と、吉岡さんは話す。