この問題は障害児心理学では収まりきらない

北アフリカの研究者は、上述の現象はアラビア語圏で自閉スペクトラム症の子どもに関わる実践家ならだれもが知っているけれど、科学的文献の中ではいまだ未解決の不可解な現象、と述べています。

松本敏治『自閉症は津軽弁を話さない リターンズ』(角川ソフィア文庫)

現実に目の前にある現象というのは、特定の学問領域には収まりきらないものだと感じます。私の専門は障害児心理学ですが、音響音声学、言語発達、社会言語学、アイスランドやアラビア語圏の言語事情、さらにはメディアの進化などにも目配りをしなければいけなくなっています。

現在、アイスランドやアラビア語圏の事例、そして英語しか話さないとされた自閉スペクトラム症幼児のその後についてまとめているところです。加えて、言語発達の実証的研究成果と現場からの報告をつなぐ解釈の検討も進めています。

「なぜ自閉スペクトラム症で生じるのか?」「自閉スペクトラム症以外では生じないのか?」「どのようなメカニズムで生じるのか?」という問いの解決へ向け、光が見えてきました。

いつかご報告できればとおもっています。

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