「上級国民」の特権をさらに増やしていいのか

こうした人は、日本に本拠を置いて米国に規制なしに出入りできるので、両国を股にかけて働くことができ、非常にお得である。「米国の国防省の予算をもらいたいから」とか言う人もいる。

本人は海外に住んで外国籍を取りたいが、親が日本国籍離脱を嫌っていて板挟みになるので二重国籍を認めてほしいというケースもある。当然、そういう人は、国際ビジネスマン、留学経験者、そして官僚や政治家の縁者に多い。あまり好きな言葉でないが、いわゆる「上級国民」である。

本人にとっては、二重国籍が認められれば権利は二人分、義務は一人分なので好都合だろうが、それは特権以外の何物でもない。また、両親の国籍が異なる子供に、母親と父親どちらの希望を叶えるか選択させるのは気の毒だと言う人もいるが、家族のどちらの希望に沿うか選択しなければならない場面はいくらでもあるのに、国籍だけは例外である必要などない。

「忖度」で容認することはあってはならない

ただ、政治家も官僚もジャーナリストや学者も、親戚や友人にそういう状況にいる人が多ければ、「法律で認められていない二重国籍者を放置するな」とか言いにくいし、「二重国籍を認めるような法改正をしてあげたらどうか」と言いがちだ。

逆に、私のように二重国籍についてネガティブな主張をしていると、いろんな人が「そんなことは言わないでほしい」と頼んでくることがある。私は、それは正義に反するから受け付けないが、政治家などに規制を強化すべきだと意見すると、「私の親戚にも二重国籍で困っている人がいるからなあ」と難色を示されることが多いのである。

このように上級国民の中で「忖度そんたく」が進み、二重国籍を容認する方向へ進むことはあってはならない。とくに政治家や官僚には、二重国籍のリスクを正しく認識し、現行のルールを徹底することが求められている。

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