健康保険証とマイナンバーカードを一体化した「マイナ保険証」を巡り、トラブルが相次いで報告されている。評論家の八幡和郎さんは「この程度のミスは想定の範囲内で、マスコミは過度に騒ぎすぎだ。マイナ保険証による国民生活のメリットは大きく、政府は早期の一体化という基本路線を崩すべきではない」という――。
「保険証廃止」と書かれたニュースの見出し
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国民の不安を煽る「マイナ保険証」報道

「健康保険証」が、来年秋に廃止され、代わりに、「マイナ保険証」が義務化されることへの抵抗が強まっている。

マイナカードの普及は、菅内閣・岸田内閣のもとで、マイナポイントの付与をてこに大きく前進し、人口に対する普及率は77パーセントに達した。現実社会でのIT社会の進展に伴って国民の抵抗感が減ったことも背景にある。

そこで、河野太郎デジタル大臣は、一気に保険証と運転免許証とマイナカードの一体化を進めようとした。IT後進国から先頭ランナーになるための大勝負だ。

ところが、一体化作業の過程での誤入力が針小棒大に報道されることで、国民の不安が煽られている。国家による個人情報の把握を嫌う人たちの扇動が背景にある。これまでも脱税やなりすましがばれて困る人たちが、個人情報の「名寄せ」を妨害してきたことはまた論じたいが、今回も状況は同じだ。

実は紙の保険証もミス、不正利用だらけ

そもそも、現在の保険証だって酷い運用なのである。自民党の平井卓也元デジタル相は、紙の健康保険証について、本人確認ができないことなどを理由に、年間およそ500万件の差し戻しが起きているとしている。

写真もついてない保険証だから不正利用は膨大で、しかも、それが身分証明書として使用されることは犯罪の温床であり、安全保障上も重大な懸念がある。

だから、携帯電話の契約では、各社が保険証を本人確認に使用することを受け付けなくなってきているわけである。もしマイナカードと一体化しないなら、保険証を写真付きのものにすべきで、それは、マイナカードとも照合されるべきであろう。

フランスでは、マイナカードにあたる身分証明書(以下、便宜上マイナカードという)のほかに、医療関係に特化した「Vitale」という共通カードが別途1998年からあるが、やはり問題が多いので統合しようという動きがあって論争中だ。

日本でも、健康保険証に変えて、マイナンバーと紐付けされた新しいカードを発行する方法もあるが、いまさら、そんなことするなら、マイナカードと一体化した方が手っ取り早いに決まっている。