「情報流出が怖いから返還する」は不可思議

マイナポイントが典型だが、国や自治体が国民に協力してほしいときに、アメばかり使うのもよろしくない。むしろ、手続きしなければ、罰金を取るとかサービスを給付されないとかムチも使うべきだ。マイナ保険証による業務効率化で節約できる税金はかなり大きく、増税を回避できる可能性もあるのだから、国民にとって損な話ではない。

マイナカード普及を促進する総務省のマイナポイント事業サイト
マイナカード普及を促進する総務省のマイナポイント事業サイト

情報流出については、どんなシステムのもとでもリスクをゼロにすることは難しく、今回のようなわずかな件数で騒ぎすぎだ。民間企業でも顧客や会員情報が流出するケースが多々発生しているが、自分の個人情報が流出したからといって、便利な生活を捨ててまで解約するということはあまりないだろう。にもかかわらず、情報流出の危険性を理由にマイナカードに反対し、返還までするのは筋が通らない。

現在のように、ネットショッピングやカードを申し込むときに、やたらと個人情報を聞かれるのは不愉快で、情報流出も起きやすい。むしろ私は、支払いを踏み倒したら警察・裁判所がマイナンバーで追跡することを可能にすることと引き換えに、企業が必要以上の個人情報を収集することを禁じることのほうが合理的だと主張してきた。

保険証との一本化路線は崩すべきではない

日本の将来を考えれば、基礎的な個人情報とか、不動産などについての情報は、明治維新のときのように、一度全面的にリニューアルすべきだ。

とくに、漢字が正式で読み方は従だというのは、なんともIT時代にそぐわない。なにしろ、戸籍にこれまで記載がなかった氏名の「読み仮名」を書く改正戸籍法が議員立法で成立したのは、この6月で、2024年度に施行され、全国民が施行後1年以内に本籍地の市区町村に届ける必要があることになったばかりだ。

「キラキラネーム」をどうするかばかりが話題になっているが、重要な一歩だ。次は地名についてもきちんとした整理をすべきだ。

それも含めて、10年とかしっかり時間をかけて、公的情報についてのシステムは、一から作り直したほうがいい。そのなかで、戸籍・国籍・氏名などのあり方も検討し、マイナンバーを活用してあらゆる行政サービスが公平に透明性高く行きわたるシステムを作ればいい。その場合、韓国や台湾といった先進的なシステムを輸入し、日本の実情に合わないところだけ変えるだけにしたほうが、早いかもしれない。

ただ、そんな大事業を待っていられないし、とりあえずは、パッチワーク的でも、現行のマイナカードと保険証を紐付けし集約しておいたほうが、新システムの導入も楽になるだろう。

マスコミは、来秋の保険証廃止を政府が見直すかどうかをしきりに報じているが、河野太郎デジタル大臣も岸田文雄首相も、補完的対策は取るにしても、一体化という基本路線だけは崩すべきではない。

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