例外の場合も20歳になるまでに選択を迫られる

伝統的に東アジアは単一国籍で、中国は厳格に運用している。日本に帰化したのに、それを隠していると財産を没収されたりするケースもあるようだ。台湾は国民の数を多くみせたいといった狙いがあり、二重国籍を認めている。

韓国は2011年、李明博大統領のときに、新自由主義的な発想で経済やスポーツ系の人材を誘致するため、限定的に二重国籍を認めた。

日本の国籍法は二重国籍を認めていない。例外は、両親の国籍が違う場合とか、出生地主義の国で生まれた場合で、当初は22歳、2022年4月の民法改正以降は20歳に達するまで、重国籍となった時が18歳以上であるときはその時から2年以内に「国籍選択」をすることが求められる。日本国籍とイラン国籍の二重国籍だったダルビッシュ選手のケースが話題になったことを記憶している人もいるだろう。

 

日本国籍を選択したら、もう一方の国籍を離脱するように努める義務があるが、徹底されていないのは、離脱することが許されない国があったり、多額の時間と費用がかかったりするため強制していないからだ。

また、女性が国際結婚すると、自動的に夫の国籍が与えられるイスラム国などの場合、本人にどちらかを選ばせるのは酷かもしれない。

「権利は2人分、義務は1人分」はアンフェア

正義の観点から二重国籍が好ましくないのは、二人分の権利を行使できる一方、義務は一人分でいいことがほとんどだからだ。選挙権はどちらかにすべきだし、旅券も一つにするか、少なくとも同時に二つを平行して使うのは禁止すべきだ。

日米で就労ビザなどをとらずに働けるのは、本人にとっては得だが競争相手にとっては、アンフェアである。テロ対策について考えると、日本政府が例えば北朝鮮などへの渡航を自粛するように求め、渡航したら把握できるようにしても、二重国籍の人がもう一方のパスポートを使うと追跡できない。脱税の温床にもなる。

反対に義務が二人分になることは少ないが、面倒なことはたまに起きる。近年、両親がフランス人で米国生まれ、フランス在住の二重国籍者が、突然、フランスの銀行から「あなたは米国民として納税番号の登録をせずブラックリストに載せられているので、当行ではあなたに融資すると米国から制裁を受ける可能性がある」とローンを拒否される事件が続発した。

また、欧米は徴兵制を停止しているだけだから、もしベトナム戦争のような状況になった場合、二重国籍者が入国したら徴兵されるかもしれない。ただ、普通は、権利は二人分、義務は一人分に近い。