「課題」さえクリアできれば、実現まで25年

現在までに、宇宙エレベーターの実現にはさまざまな課題がある。

地球上の建築物で最も高いブルジュ・ハリファ内のエレベーターとはわけが違う。これだけの高度を確実に上れる前人未到の技術が必要になるのだ。

ケーブルには、強度が高いカーボンナノチューブ製のものが検討されているが、これだけの長距離のものを作り上げる技術はなく、宇宙放射線への耐性確認など、宇宙環境に耐えうるものなのかについての研究を進める必要がある。クライマーも開発しなければならない。

ほかにも課題はあるが、これらの課題がクリアできれば、アース・ポートの建設に着工してから25年の年月で建設可能だという。予算についての言及はない。この宇宙エレベーターの実現について、専門家の間では「不可能だ」「実現はもっともっと未来だ」などという悲観的な意見もある。

ロケットは「宇宙ゴミ」になる

一方で大学などでは、さまざまな研究が行われている。例えば神奈川大学では、宇宙エレベータープロジェクトを立ち上げ、地上でクライマーなどの研究を実施したり、静岡大学では、実際に小型の人工衛星を打ち上げて、ケーブルを垂らしてクライマーの上昇下降などの研究を行ったりするなど、宇宙エレベーター実現に向けた要素技術の研究に尽力している。

宇宙エレベーターが実現すれば、どのような未来が待っているだろうか。

一つは効率的・経済的に、宇宙へとアクセスできる点だ。例えば、ロケットなどの輸送機は、複雑なシステムをある程度の期間をかけて製造しなければならないが、宇宙エレベーターの場合、エレベーターに乗るだけで済む。輸送が容易で経済的だ。

そして、ロケットは使い捨てである。宇宙空間に捨てられたものは、宇宙空間を漂い続け、いま問題となっている宇宙ゴミ(スペースデブリともいう)になる。ほかにも、地球上に落ちて建物などへの被害を及ぼしたり、人の命を奪ったりする可能性もゼロではない。

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当然落下地点は綿密に検討されたものであるとはいえ、いま現在でも宇宙ゴミが畑に落ちてきたなどのニュースも耳にする。使い捨てではない、再利用型の輸送機もあるが、エンジンの噴射や大気圏への突入による損傷を改修しなければならず、その分のコストと時間がかかる。