中国茶にフルーツとクリームチーズをトッピングした独自のフレーバーで、健康志向の高い若者を中心に大人気の喜茶は、スマートフォンアプリで注文したドリンクを専用のロッカーで受け取る「喜茶GO」というサービスを2018年から展開しています。
スマートフォンを通じてユーザーのペルソナ、購入履歴、地域分布消費ピーク時間帯などのデータを取得し、AIが解析して購買体験の向上につなげるモデルは、まさしくラッキンコーヒーが築いた常道といえるでしょう。
なぜラッキンコーヒーは「打倒スタバ」を実現できたのか
特徴① 24時間働き続けるAIが「空白」を埋める
世界の最先端のテック企業においては、マーケティングはもはや「人」ではなく「AI」が担っています。本社のマーケターが机上で一生懸命ペルソナを考えなくても、ユーザーデータという「ファクト」が日々膨大な量で収集・蓄積されており、それをAIが24時間解析し続けることで、個々のユーザーのペルソナや消費性向がおのずと浮かび上がってきます。
そのペルソナをもとにプッシュ通知を送り、その結果をチェックする、という仮説検証を高速で繰り返すことで、あらゆる時間帯で需要と供給のマッチングの精度が上がり、空白がどんどん埋まっていきます。
さらに、デリバリーフードサービスのプラットフォームでは、配送の路線データもすべて収集し、AIが日々解析しています。ユーザー属性から注文履歴、決済履歴、移動履歴にいたるあらゆるデータを、ユーザーIDを軸に統合することで、ミクロレベルまでユーザーのペルソナを浮かび上がらせることができるのです。
特徴② 「プッシュ型」の強力なマッチングシステム
世界のテック企業は、「待つ」ことをしません。ユーザー、そして店舗をプッシュ型で常に誘導し、マッチングさせるシステムを持っています。
AIによって解析された「誰が、どの商品を、いくらで購入したいか」という個々のユーザーの消費行動をもとに、カスタマイズされたプッシュ通知を日々発信しています。「このユーザーはこれくらい割引しないと買ってくれない」というレベルまで消費行動がわかるので、その特性をふまえ、ユーザーによって異なる割引サービスを提案しています。
一人ひとりに最適化された情報が届く
あまり頻繁にプッシュ通知が鳴るとうんざりしてしまいそうですが、そこも個々のユーザーごとに最適化された絶妙なタイミングと内容になっているので、不思議とうるささを感じないのです。
ユーザー側だけでなく飲食店側にも、細かいセグメンテーションとランキングシステムによって「いま、この時間にサラダを食べたい人がこのくらい増えています」「この時間まで延長しませんか?」といった形でプッシュ通知が送られています。
その結果「ライバル店が店を閉めている間に集客しよう」との強力なインセンティブが働き、稼働率の低い深夜などの時間帯にも開店する店が増え、そこでも需要と供給が最適にマッチングされる仕組みになっています。こうして24時間すべての空白が埋まっていきます。