ユーザーの側にしてみれば、24時間いつでもお得な値段で買い物ができ、短時間で自宅まで届けてくれるので、これほど便利な消費体験はないでしょう。
でも、その裏ではプラットフォーム側が強い制限をかけてユーザーを誘導しているのです。もはや、強大なプラットフォーマーが人々のライフスタイルをも変革しているといえるでしょう。
前集金型の割引サービスを展開する中国企業も
特徴③ 「前集金型」で未来の空白も埋め尽くす
「空白をつくらない」消費体験は、何年も先の「未来」にも及んでいます。つまり、数カ月先、数年先のサービスも一括で購入する「前集金型」のビジネスが普及しています。
飲食のみならず美容やフィットネスなど、多くのジャンルで前集金型の割引サービスをよく見かけます。たとえば、1カ月の料金が1万5000円のパーソナルトレーニングジムがあるとします。そのジムがあなたに「5年契約して一括して前払いすると月額8000円になります」という前集金型の割引サービスを提案してきたりします。
おもしろいのはここからで、あなたが計48万円(=8000円×12カ月×5年)を一括で払って購入する必要はありません。実際の支払いは信販会社が前払い一括で払い、あなたは毎月8000円を信販会社に払います。つまり、結果だけ見ると、1カ月の料金が1万5000円から8000円へと割引になっているのです。
さらに、あなたは「あそこのパーソナルジム、すごくいいよ。一度行ってみたら?」と知人を勧誘し、8000円のチケットを1万円で販売して、まるで株式売買のように差額の2000円を儲けることが可能なのです。
今も、未来もAIが需要と供給を結びつける
パーソナルトレーナーも、ジムの回数券を100万円分買い、自分の取り分を上乗せした金額でユーザーに販売する、といったことを行っています。ジムは自動的な集客になり、トレーナーは自分専用のジムを保つ必要がありません。
さらに二次流通のプラットフォームも用意され、期間の途中でジムを退会する人は、会員権を転売することが認められており、前払いのリスクヘッジができます。
ジム側にとってみると、会員権が転売されるということは、誰かが退会しても実質的な会員数が減らないということです。会員数はそのまま、あるいは増える一方なので財務が安定し、豊富なキャッシュにより、出店を一気に加速させることができます。
このように、未来の「空白」を埋める前集金型のビジネスから新たなビジネスが派生するダイナミックさに、人口14億人の中国マーケットの底知れなさを感じずにはいられません。