中国全土に6000店舗を展開する「スタバキラー」

「フードデリバリー大国」の中国では、デリバリー網が発達しており、数十分程度ですぐに届けてくれます。需要と供給のマッチングに加えて、即座にデリバリーまでしてくれるとあって、取引の行われない「空白の時間」がますます埋められていきます。

プラットフォーマーは、膨大なユーザーデータと、きめ細かい配送網を武器に、グルメから通販、美容、医薬品、生鮮食品へと、取り扱う領域を次々と拡大しています。最先端のテック企業は、どのような仕組みで24時間の空白を埋めるサービスを展開しているのでしょうか?

上海が、世界でもっともコーヒーショップの軒数が多い都市になった――。2021年11月5日、こんなネットニュースが中国のネットメディアでトレンド入りしました。

同日の「人民網日本語版vi」は、「上海市には現在、コーヒーショップが6913軒もある。その数はニューヨークやロンドン、東京に比べてもはるかに多く、世界でコーヒーショップが最も多い都市となっている」と報じています。

中国でもっともポピュラーな飲み物といえば中国茶で、ひと昔前にはコーヒーを飲む習慣はほとんどありませんでした。それが、今日ではスターバックスが5000店舗以上を構えるなど、中国でもカフェ文化が広まりつつあります。日系企業もプロント、コメダ珈琲店、ドトールなどが中国に進出しています。

その中で、2017年に突如登場し、破竹の勢いで規模を拡大していった中国の新興コーヒーチェーンがあります。それが「ラッキンコーヒー」です。

ラッキンコーヒーのカップ
ラッキンコーヒーのカップ(写真=Stellasun666/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

創業4年で「スタバ超え」

スターバックスと同じ品質のコーヒーを、スターバックスの半額で提供する――。トナカイのイラストがトレードマークのラッキンコーヒーの戦略コンセプトは、実に単純明快です。

職場でも家庭でもない「第三の場所(サードプレイス)」の提供がコンセプトのスターバックスに対抗して、テイクアウトに絞って店舗面積と人件費を最小限に抑えることで、高品質・低価格のコーヒーサービスを実現しました。

スターバックスへの対抗軸であるこのローコスト戦略が的中し、ラッキンコーヒーは創業して1年あまりで2000店舗を突破し、当時の中国企業としては最速でユニコーンの仲間入りを果たしました。

そして2019年5月、設立わずか18カ月で米ナスダックへの上場を実現します。

しかし、好事魔多しとはこのこと。2020年4月に売上を水増し計上していた不正会計が発覚したラッキンコーヒーは、同年6月にはナスダックでの上場廃止、当時のCEO(最高経営責任者)とCOO(最高執行責任者)も解任され、アメリカで破産申請するという事態にまで追い込まれました。

ところが、刷新された経営陣のもとで不正会計を処理したラッキンコーヒーは、わずか1年で黒字転換を果たしました。そして、2021年時点での店舗数が6024店舗と、スターバックスの5557店舗を上回りました。

創業当初に「スターバックスを追い抜く」と宣言したラッキンコーヒーは、創業からわずか4年で見事にそれを有言実行し、名実ともに中国最大のコーヒーチェーン・ブランドとなったのです。