主張、事実、論拠で説明力は格段に上がる

主張:「この道を走るのはやめよう」

事実:「先月この道で2件も事故が起きている」

論拠:「見通しがよくないから危ない」

精度が上がってくると、勝手に頭の中に3つの空箱を用意するようになります。

すると、主張だけで事実に該当する客観的な数字や出来事がなかったり、主張と事実を結びつける論拠が希薄だったりということがなくなります。また、人それぞれ思考のクセがあるので、主張、事実、論拠の中で、どれが弱いのかに気づく機会にもなります。

「主張」「事実」「論拠」の3つを使って話すことで、私の説明力は躍進しました。ビックリするくらい、会議で意見が通るようになったのです。外資系コンサルタントともバチバチに議論できるようになりましたし、実績が認められ年間3000億もの予算作成を任されたこともあります。

そして今、ビジネススクールを経営し、あの嫌いだった「ロジック」という言葉を使って、論理的思考や説得力のセミナーを実施しています。

嫌なことや苦手なことも、できるようになれば自分を助ける力になります。

ひろゆきがディベートでまずやっていること

「ちゃんと説明しているのに理解してもらえない……」「ロジックを明確にしても却下される……」「なかなかYESと言ってもらえない……」、こういう人も世の中には存在します。

言いたいことを明確に主張しているのに、なぜか相手の表情が晴れないケースです。

そんなとき、注意すべき3つの「落とし穴」があります。「自分は説明がうまい」と思っている人ほど、ハマっているかもしれません。ぜひチェックしてみてください。

①前提が合っていない

かれこれ2年、テレビ朝日の番組で、ディベートの審査員をさせていただいております。ひろゆきさんや、ラッパーで有名な呂布カルマさんが、芸能人とディベート対決する番組ですが、ディベートが強い人は、だいたい最初に前提をロックしにいきます。

ひろゆき氏(写真=Joichi Ito/CC-BY-2.5/Wikimedia Commons

例えば、「人生で大切なのは愛情か、お金か」、こういうお題で、「愛情」を主張する場合、まず「人生で一番大切なものは家族ですよね」と話の方向性を決めます。これが前提になると、「家族はお金では買えないので愛情が大切」という論が勝ちます。

普段の職場の会話でも、「彼はいい人だ」と主張するとき、「いい人とは約束を守る人」とか「困っているときに手を差し伸べてくれる人」など、いい人の前提が相手と合っていないと相手に納得してもらえません。

備品購入の稟議りんぎでも、「3万円くらいは買ってもいいだろう」と思って提案したものが、上司は1万円もかけたくないと思っていたら、その備品に対する前提が合っていないので、いくら購入するためのロジックを明確にしてもYESはもらえません。

前提とは、主張する言葉の意味です。まずは前提が合っているかをチェックしましょう。