和僑会に集ってくるのは海外進出を検討している、またはすでに現地でビジネスをしている人たちです。たとえば日本食レストランをやりたい人であれば「どこに立地すればいいか」という情報は当然知りたいわけです。

ただ、必ずしもビジネスだけを目的にしているわけではなく、「友達が欲しいから」というカジュアルな理由で入ってくる方もいます。ビジネスは当然重要なのですが、私は「ビジネスは二の次」であるほうがいいと考えています。

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和僑のイベントで訪問したタイ・バンコクにて

最適なマッチングを目指す

和僑会は「つながる場」と述べましたが、私はその環境の中でも最適なマッチングをしたいと考えていました。

たとえば、ある日本人経営者の方から「東南アジアでビジネスをしたい。現地の日本人を紹介してくれないか」と依頼され、カンボジアやベトナム、ミャンマーの和僑会メンバーをつないで現地視察をセッティングすることもあります。

しかし「視察に行って終わり」で、ビジネスにつながらないことも少なくありません。そうなると、せっかく紹介した現地の和僑の人たちも「結局、観光案内だったのか」とガッカリしてしまいます。

そのため私は、依頼者といろいろな話をするなかで「どういう経緯で途上国ビジネスをやりたいと考えたのか」「本当にやる気があるのか」という点をそれとなく聞き、現地側でもビジネスにつながりそうな案件があるかを確認するようにしていました。「これなら話が進むかもしれない」という条件が整っていたら、実際にマッチングするようにしていたのです。

私個人は現地の和僑会メンバーとすでに友人として親しいのですが、特に「現在の良好な関係性に甘んじない」ということを肝に銘じてきました。これは至極当たり前に聞こえることかもしれませんが、非常に重要なポイントだと考えています。

華僑はなぜお金をもらわずに人と人とをつなぐのか

おそらく、ここまでを読んでいただいて「永野のようなプロデュースする側の人間は、どのようにしてお金を得ているのか?」と不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。

日本国内では、マッチングでいえば婚活サービスや転職サービスなどが広く普及しているため、何事も「換金」で捉える資本主義的な価値観が浸透しています。そのため日本では、人を紹介するにしても「どうやってお金に換えられるか」ということを直接的に考えてしまいがちかもしれません。

結論を言えば、私はマッチングでお金をもらうことはしていません。では何をモチベーションにしているかというと、基本的には「Win-Winであること」です。誰かを紹介してつないであげたら、誰かがまた優しくつないでくれます。ここで変に「お金を……」ということになると、紹介した側が「嫌な奴」になってしまいます。