相手の方が話したいことが多そうだと感じたら、話を膨らませるような合いの手を入れたりもします。私自身は昔から笑い上戸なところがあるので特に意識はしていませんが、いつもにこやかでありたいとは思っています。
コミュニケーションの原点は、「人に関心を持つこと」「まずは相手の話を聞くこと」という対人姿勢です。まずは「相手に興味をもって雑談してみる」ということが、「僑」のコミュニケーション──お互いにとっての「自己人になる」こと──を実践する第一歩なのです。
相手に個人として認識されると、やがては会社どうしの話もスムーズに進められるようになります。そうしてようやく、イノベーションが生まれる環境が整うのだと思います。
一次情報を求めて、世界に飛び込んでみよう
最後にもうひとつ、プロデューサーに必要な資質について述べてみたいと思います。それは「メディアリテラシー」です。メディアリテラシーとは一般的に、さまざまなメディア(情報源)から情報を得つつ、それを批判的に分析して活用する能力のことを指します。
このチカラの重要性を意識しはじめたきっかけが、2003年に起きた西安留学生寸劇事件でした。西北大学の日本人留学生が演芸会で「下品な寸劇を行った」ことをきっかけに、西安で反日暴動・デモが巻き起こった……とされています。日本のテレビで「西北大学の学生たちが反日感情を爆発させている!」とセンセーショナルに報道されたため、ご記憶の方も少なくないでしょう。
私はその1年前まで、まさにその西北大学に留学していました。優しい友人たちばかりでとても良い経験ができたため、第一報を聞いたときには「そんなことはあるはずがない!」と憤りを覚えました。
日本のメディア上での批判的な報道に耐えきれなくなった当時の留学仲間が西安まで飛び、「テレビで報道されているほどではない、実際にはもっと平穏だった」ということを伝えてくれましたが、当然ながらそういったことはメディア上でまったく報道されずじまいでした。
メディアの情報を鵜呑みにしてはいけない
今もメディア上では「中国国民の対日感情、日本国民の対中感情が悪化している」と繰り返し報道され、中国脅威論、米中対立なども叫ばれています。
日本社会に生きる人の多くが、中国に対して「中国共産党が専制政治を敷いている」「ウイグルでは強制収容や虐殺などの深刻な人権侵害が起こっている」「言論の自由がない」「反日感情が強い」と感じているでしょう。しかし、現実に生きる中国人たちの姿や思いはほとんど報道されることがありません。
思い起こしてほしいのは、近代化以前からそもそも日本人は「中国好き」だったということです。日本人は古墳時代から江戸時代まで一貫して「中国に学ぼう」という姿勢を持ち続けてきました。
現代でもその感覚はわずかに残っていて、たとえば『三国志』『蒼天航路』『キングダム』などの中国を舞台にしたマンガやアニメを好きな人は、皆さんの周りにもいらっしゃるかと思います。