「常時公人」を宣言する川勝知事の矛盾

「いろいろな先生に聞いても、これ(コロナワクチン)は打っていけない」とも川勝知事は言っている。だが、静岡県で新型コロナ感染症対策に取り組む医師の後藤幹生・県感染症管理センター長は「わたしには知事から相談がなかった」と説明している。

筆者撮影
知事会見で新型コロナウイルス感染への注意を喚起する後藤県感染症管理センター長(静岡県庁)

後藤医師は「コロナワクチンは感染予防のためであり、病気の際の薬剤のように必ず服用するものと違い、アナフィラキシーショックを経験したならば無理やりに打つものではない」と川勝知事のワクチン拒否に理解を示す。

後藤医師の言う通り、川勝知事が「公人」ではなく「私人」であるならば、過去のトラウマから副反応を恐れてコロナワクチンを受けないことも理解できる。ワクチンを打つ、打たないは、「私人」であれば、自由である。

しかし、川勝知事は、県民にコロナワクチン接種を奨励する「公人」であり、何よりも「常時公人」であるとも宣言しているから、「私人」の立場で物事を言うのはおかしくなる。

「ワクチンには副反応がある」と言うべきだったのでは

もし、「私人」の立場を尊重するならば、川勝知事は会見で、「コロナワクチン接種にはアナフィラキシーショックのような危険な副反応がある。コロナワクチン接種は自由であるからそれぞれ慎重に考えたほうがいい」などと述べるべきではないだろうか。しかし、そんな発言は一度もなかった。

知事会見のあった翌8日の静岡新聞の記事は、川勝知事がコロナウイルスの緊急事態宣言を「解除できる状況にない」認識を示し、別の記事では、コロナウイルスワクチンの大規模摂取会場を新たに2カ所増やし、接種率が全国平均を下回る県内の状況を踏まえ、「県全体の接種の加速化を図る」と川勝知事が強調したと伝えた。

川勝知事の会見の趣旨は、県民に向けてコロナワクチンの接種を積極的に奨励したのであり、各社ともその部分のみを記事にした。

つまり、川勝知事の会見は「公人」として、コロナワクチン接種を積極的に奨励したに過ぎない。「公人」の立場で、コロナワクチン接種拒否を表明したわけではないのだ。

川勝知事がはっきりと「公人」の立場で、コロナワクチン接種拒否を公言すれば、静岡県民の中には、コロナワクチン接種を見送った人も出ただろう。

もし危険性があることを踏まえて県民に慎重な対応を求めたならば、静岡市のAさんらのような後遺症患者はもっと少なくて済んだ可能性が高い。