年収400万円の場合「約20万円の負担増」の可能性

今後、政府が給与所得控除を主要国並みに下げる可能性は高いでしょう。

その場合、会社員の負担はどのくらい増えるのでしょうか。ざっくりですが、計算してみました。

仮に給与所得控除をフランスの水準まで下げると、年収400万円の人の税負担は年間43万円。ドイツの水準まで下げると、年間48万円の負担になります。

現在の給与所得控除水準だと、年収400万円の場合の税負担は26万円でしたので、17万~22万円程度の負担増が見込まれます。年間の税負担が約2倍になり、大体2カ月分の給料くらいを税金として支払うイメージでしょう。

社会保険料の57万円を追加すると、年収400万円の人の税・社会保障負担は100万円を超えてしまいます。

かなり大きな負担だと思いますが、政府はいまこういう税制に変えようとしているのです。

と言っても一気に増税するわけではなく、数年かけて少しずつ引き下げていくのではないでしょうか。

筆者作成

「公的年金控除」「住宅ローン控除」も見直し予定

政府の目的は「働き方による税金の差をなくす」ことです。

そのため、給与所得控除を減らす代わりに基礎控除は増額することも考えられます。

実際、令和2年の税制改正でも、給与所得控除が10万円減った分、基礎控除を10万円増額しています。

ただ、政府税調が検討する増税は他にもたくさんあります。

特に、「公的年金控除」と「給与所得控除」の二重取りについては、今後是正される可能性が高いと思います。

年金を受給しながら働く場合、公的年金控除と給与所得控除の両方を受けられます。ただ、これが現役世代に比べて優遇されているという議論があり、見直しが検討されています。

実施されれば、年金で暮らす方にとってはかなり痛いと思います。

ほか、「住宅ローン控除」の見直しも検討されているようです。

少子高齢化の影響で空き家問題が深刻化しているため、これ以上新築を推奨するのは良くないという議論があり、見直しが検討されているようです。

年末の税制改正大綱に入るかどうかが焦点

これらの増税案は、あくまで現在議論されている段階に過ぎません。年末に発表される自民党の税制改正大綱に入るかどうかは現時点ではまだわかりません。

しかし、政府税調のレポートには財務省の意向が強く反映されていると見るべきで、この方向で決まる可能性は高いと思われます。

実際、インボイス制度の場合もこうした経緯をたどっています。2013~14年ごろに政府税調で議論された後、2015年に閣議決定され、実施が決まりました。

ちなみにインボイス制度の場合、税理士会は政府税調で議論されていた時から反対していました。ただその時点では世論が盛り上がっておらず、そのまま決定されてしまいました。

増税は実施が決まってからひっくり返すのは難しい、というのが過去から得られる教訓です。政府税調での議論を注視し、増税の是非について、継続的に見ていかなければならないと思います。

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