否定も励ましもせず、どうやって話を聞けば良いのか

それでは、どのようにすればこのような「やってはいけないこと」を避けつつ、心の絆を作り、孤独感を癒すことができるでしょうか。最も重要なことは、その人の死にたい気持ちに向き合い、話をじっくりと聞くということです。そして、話の聞き方はおそらく、普段その人と接する感じで問題はないのだろうと思います。死や自殺について話をするからといって、何か特別なことをする必要はありません。

普段の関係性で良いと書きましたが、もし話を聞くのが苦手だという意識があれば、以下のようなことを軽く意識してみてください。相手の話を聞くときに大事なことは、何が起こっているのかという状況と、その時の本人の感情状態を理解し、こちらが理解したことを伝え返すことです。それが、話を真剣に聞いてもらえているという感覚を生み出し、心の絆を作っていきます。

対話の際に、感情面の話が多く状況についての説明が苦手な人には、状況についての質問をときどきはさみながら話を聞くと良いでしょう。状況の説明が多く感情面の説明が苦手な人には、「で、その時どう感じたの?」といった感じで感情面に焦点をあてた質問をはさみながら話を聞くと良いでしょう。

うまい返しが思い浮かばない時には、相手の言ったことに対してオウム返しをするのも良いですし、相手の話が分からない時には、「○○の部分が分からなかったんだけど、△△ということ?」みたいな感じで確認とも質問ともとれるような言葉をはさんでいくと良いでしょう。また、言葉で理解したことを伝え返すだけではなく、表情や声のトーン、相槌など言葉以外のリアクションも大事です。

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沈黙は続く場合はそのまま同じ時空を共有するだけでいい

話を聞くと書きましたが、沈黙が続く場合にはそれを共有する(時空を共有する)だけでもOKです。死にたい状況に追い込まれた人は、いつでもその人の状態を饒舌に話してくれるわけではありません。場合によっては、「死にたい」以外にほとんど何も口にしないという状況もあるかもしれません。そうした場合には無理に話をせず、沈黙を共有するだけでも絆を作る上ではプラスになります。

また、ぽつりぽつりとでも話をしてくれるのであれば、やはり沈黙を大事にし、返答をするにしてもゆっくりと返答をし、相手の発話を大事にすることが求められます。沈黙が続くと場の雰囲気が悪く感じられ、そのことを恐れた話の聞き手がべらべらとしゃべったり、質問を連発したりすることがありますが、これは心の絆を作るという点で、上策ではありません。