台風や大雨のとき、外の様子を見に行った人が事故に巻き込まれるケースが後を絶たない。なぜこのような危険行動をとる人がいるのか。兵庫県立大学環境人間学部の木村玲欧教授は「好奇心と責任感の2つのパターンに分けられる。いずれにしても、『危険だから見に行かないで』と呼びかけるだけでは逆効果になる」という――。
2023年6月2日、大雨の東京を歩く女性
写真=EPA/時事通信フォト
2023年6月2日、大雨の東京を歩く女性

毎年のように同じような理由で事故が起きる

2019年10月、令和元年東日本台風(台風第19号)が発生しました。中部から関東・東北にかけて猛烈な風雨をもたらし、100人を超える死者・行方不明者が発生しました。

この台風では「川のようすを見に行ってくる」、「田んぼのようすを見に行ってくる」、「経営する施設のようすを見に行ってくる」と、宮城県、福島県、栃木県、神奈川県などで亡くなる人が出てしまいました。またこれ以前も、そして以降も、毎年のように同じような理由で亡くなる人が出続けています。

なぜ、大雨や台風の中、出歩いてしまうのでしょうか。亡くなる人を少しでも減らすためには、何をすればよいのでしょうか。今回は「川のようす」や「田畑のようす」を見に行く人々の心理を知ることで、このような危険な行動に対する危機管理を考えます。

「好奇心」と「責任感」の2パターン

「外、川、田んぼ、施設のようすを見に行く」理由には、大きく2つのパターンがあります。1つ目は「どのようなことが起こっているのか、どんな被害が発生しているのか純粋に知りたい」という「好奇心」パターン、2つ目は「自分の仕事として外出せざるを得ない」「必要があって行く」、「先祖からの土地や財産を守る」という「責任感」パターンです。

もちろん人の行動を変えるのはなかなか難しく、特に「責任感」パターンを減らすのは難しいのですが、まずはどうしてこのような行動をとってしまうのか、その心理を理解することから始めましょう。