対話して引き留めるときにやってはいけない3つのこと
具体的な自殺企図の手段を物理的に撤去し、安全な環境を作ったら、次にやるべきことは所属感の減弱への対処となります。これは要するに、「死にたい」と打ち明けた人との関係性を密にし、対話を通じて心の絆を作り、孤独を癒すということです。心の絆を作るためにやってはならないことは割と単純です。
1)話をそらさない
話をそらして「死にたい」という気持ちに向き合わないことは、最も避けるべきことです。最も避けるべきことなのですが、最もやらかしてしまうポイントでもあります。というのは、「死にたい」という気持ちに向き合うということは、向き合う(向き合わされる)側にとってもとてもしんどくて恐いことであり、できれば避けたいものだからです。
自分の対応によっては「死にたい」人が実際に死んでしまうかもしれないわけで、それはやはり我々にとってとても恐いことです。話題をそらしたくなるのは、ある意味で自然な反応です。しかし、打ち明けた側は、この人であればと思って打ち明けているわけですから、これぞと見込んだ人に話をそらされてしまえば、相当がっくりくるはずです。
2)相手を叱りつけ説教しない
また、当然のことながら、相手のことを批判して叱りつけたり(例:「そんなことは口に出すもんじゃない!」)、社会的・一般的な価値観を押し付けたり(例:「親からもらった命や身体は大切にするもんだ」)すれば、心の絆ができることはないでしょう。こうした点は、自殺への危機介入というだけではなく、人間関係一般と共通する点であり、特段おかしなことはないでしょう。
3)無理に励まさない
また、これは難しいところですが、励ましたり激励することも、避けておいた方が無難かもしれません。もちろん、励まされることによって元気になる人もいないことはありません。とはいえ、自殺への危機介入の場合、すでに大いに頑張った末に死にたくなっていることがほとんどであり、頑張れと励まされても、これ以上は無理だと思う人が多く、逆効果になってしまうことが多いものです。
助言をすることも同様で、問題状況を解決するための助言やアドバイスは空疎に響くことも多く、当初は避けておいた方が無難です。死にたい状況に追い込まれた人の置かれた環境は複雑で、簡単な解決策が見当たらない場合がほとんどであり、死にたいと言う前に本人なりに考えたさまざまな解決案がいろいろと試されているはずです。そのような状況下で、安易な解決策を助言したところで、ほとんどの場合、「もうそんなことはとっくにやったよ」となってしまい、信頼を失う可能性が高くなります。