原発は“公営化”し、9電力でマネジメント

原発の再稼働問題にしても、一般論で賛成、反対を言っても意味がない。原子炉の状況は1つ1つ違う。再稼働すべきかどうかの判断は、「どんな事態になっても冷温停止し、その状態が維持できるように、電源と冷却源の多重性と多様性が確保されているかどうかを、1つ1つの原発でチェックして個別に判断されるべきもの」なのだ。コンピュータ・シミュレーションによるストレステストでは、安全性は決して保証されない。

「この条件が満たされている限りは原発を再稼働しても安全」ということを国民にわかってもらうことが政府の大事な仕事であり、それができない政府なら、原発は再稼働しないほうがいい。

断っておくが、私は基本的には原発の再稼働に反対である。理由は政府がきちんとこの問題に向き合っていないからだ。きちんと向き合い、それぞれの原発1つ1つに対策を講じれば、再稼働できる原発がかなりあるのに、それができていない。

私が大飯原発3号機、4号機が再稼働可能と判断したのは、関西電力が電源・冷却源の多重性・多様性を確保し、どんな状況になっても政府の危機管理能力が試される局面にならないと考えたからだ。

今の無能な政府の下では、他の原発の再稼働は行ってほしくない。

さらに言えば、今後、原発を再稼働していくにしても、民間企業によるマネジメントには限界がある。はっきり言えば、より小さな電力会社の管内で原発事故が起きたときに、本当に責任を持って事故を収束する能力が備わっているのか? すべての電力会社にそれぞれ原子炉を持たすことを国策でやってきた。今問われているのは、過酷な事故になったときにすべての電力会社にそれを収束させる力があるのか?ということである。

これからの原発事業には、3つの大きな課題が待ち受けている。1つは「再稼働、オペレーションの問題」であり、2つ目は「燃料リサイクルと使用済み核燃料の処理問題」、そして3つ目が「廃炉の問題」である。どの課題も電力会社が単独でマネジメントできる範疇を超えてしまっている。

原発事業は1つにまとめて“公営化”し、全国9電力の精鋭を集めてマネジメントしていくしかないだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(小川 剛=構成 東京電力/PANA=写真)