身内に審判をさせてイカサマ勝負を仕掛ける卑劣なアポロン

マルシュアスの評判を耳にして怒った音楽の神・アポロンが、からんできた。

「どっちが世界一の音楽家か、オレはたてごと、お前はふえで勝負だぁ!」と。さらに、「勝者が、敗者に“何してもいい”ことな!」という約束までさせられて……。

しかも、この対決のしんぱんは、ムーサという芸術の女神たち。この時点で、マルシュアスはカンペキ不利だった。なぜなら、ムーサたちはアポロンのおともで、完全にアポロン側の神だからだ。

そんなのイカサマ勝負とわかっていながら、やめられなかった。神ランキングが上の上級神には、さからえないのだ。

それでも2人の演奏は、どちらが優れているのか決められなかった。それだけ、マルシュアスの音楽はすばらしかったのだ。

『王様の耳はロバの耳』の元ネタもアポロンにある

だが、アポロンは、たてごとを上下さかさに持ちかえてかなでたり、演奏しながら歌い始めた。「お前も同じようにやれ」という、ちょう発だ(大人げない)。もちろん、どちらも、ふえでは無理に決まっている。

こざきゆう、真山知幸(著)、庄子大亮(監修)『ぶっ飛びまくるゼウスたち』(実業之日本社)

この瞬間、マルシュアスの負けは決まった……。泣いて許しを求めるマルシュアスをガン無視で、アポロンはなわでしばりあげ、木にさかさづりにすると――生きたまま皮をはいでいったのだ(!)。ぎゃ〜、ざんこく! マジ、アポロン、頭バグってる!

楽器を拾ったがために、アポロンにからまれ、天国から地獄に落ちたマルシュアス。「犬も歩けば〜」で言えば、アウロスを拾う行動をしたため、痛い目にあったどころか、死んでしまった。ひどい話だ。

ちなみに、アポロンには、似た話が他にもある。

牧畜の神・パンとふえで対決をしたときだ。しんぱんをした、今のトルコ中西部・プリュギアのミダス王が、パンの勝ちを告げると、アポロンがめちゃ怒りだした(ん? 逆ギレでは⁉)。

そして、ミダス王の耳を、ロバの耳に変えてしまった。そう、童話『王様の耳はロバの耳』でおなじみの王こそ、このミダス王なのだ。

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