神を畏れぬ傲慢な人間の元へやんわり注意をしに降臨

いつもやりすぎちゃうギリシャ神話の神々の中では、アテナは、かなりまっとうで知的な優等生キャラ……なんだけど、やっぱ神は人間の常識じゃあ測れない。神のプライドが高いもんだから、ごうまんな人や反こう的な者には、ま〜、ようしゃなくやりすぎる! ひどいほど、てってい的に!

オーストリア国会議事堂前の古代ギリシャの女神アテナ
写真=iStock.com/Privizer
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そんなアテナの性格をよく表しているのが、「アラクネ事件」だ。

染物が有名な地域・リディアで育った娘・アラクネは、織物名人。彼女が作る織物はレベチ(レベルちがい)な美しさだから、町の人々は、「あんな神がかり的な織物の技、アテナ様から教わったんじゃね?」と、感心しまくり、うわさしまくり。アテナは、技術の女神でもあるからだ。

ところが、これがアラクネには何だかムカつきまくり。

「自分で技術を極めたっつーの! 織物の技はアテナ様よりも上にちがいないわ‼ そうよ、私の技は神をこえているの‼」

悪口には地獄耳なのか、アラクネの言葉が聞こえちゃったアテナは、「!」となり、おばあさんに姿を変えて、やんわりと注意しにいった。

「人間の身分をわきまえなさい、女神さまは、あやまれば許してくれるわよ」と。

織物対決で父ゼウスをバカにされて激怒

ところがアラクネにしてみれば、何言ってんだコイツ、だ。しかも、「女神と、どっちが織物の技が上か勝負したいくらいだわ」と言い出すしまつ。さすがのアテナもあきれかえって、女神の姿にもどると、織物名人VS技術の女神の、意地とプライドをかけた戦いの火ぶたは切って落とされた! いきなりだな‼

織り進める絵のできは、さすが、どちらもお見事。アテナはアラクネの織物を見て、人間で敵とは言え、そのすばらしさに感心した。だが、絵の内容がいけなかった……。父で最高神のゼウスが、動物に変身して人間の女の人をナンパしている、つまりゼウスを笑いものにした絵だったのだ(まぁ、ゼウスの日ごろの行い通りの絵と言っちゃえば、その通りなんだけど……)。

「これは許せない! 反省しなさい」

アテナはその布を引きさき(ひどい! その1)、頭を織物道具でひっぱたいた(ひどい! その2)。アラクネにしてみれば

「ひっぱたいたね! 母さんにも、ぶたれたことないのに!」

な女神の仕打ちに超ショック! 首をつって自殺しようとしたのだ。

女神に刃向かうぐらい強気なわりに、メンタルは弱かったのね。こうなっちゃうと、アテナは怒りも冷めて、何だかあわれな気持ちになってしまう……。

そこで、「生きなさいアラクネよ。クモとして」。以後、クモになったアラクネは、糸を出して巣という織物を作り続けている、というわけ。

でも、何でクモにしたの? アラクネを助けたって言うより、苦しめ続けていないかい?(ひどい! その3)。